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第50話「待て。この決闘には疑義がある」「なんとも卑劣な物言いですね。このゲスが」

 こうしてマリーベルvsアリッサ。

 ローゼンベルク姉妹の決闘が始まったのだが。


 結論を言うと、マリーベルは敗北した。

 それも手も足も出ずに、完膚なきまでに完敗した。


「これが今の実力差です。分かっていただけましたか?」

「く……っ」


 運動場で四つん這いになったマリーベルが、声にならない声を上げる。


「すぐに移籍となるとそちらのチームに迷惑も掛かるでしょう。なので今シーズンは我慢します。来シーズンからバーニング・ライガーの一員として戦ってください」


「…………」


 マリーベルは何も言い返せなかった。

 おそらくここまで一方的に負けるとは思っていなかったのだろう。

 心が折れてしまっているのだ。


 さてと。

 ここは俺の出番だな。

 俺としてもチームのダブルエースの1人がみすみす引き抜かれるのを、黙って見ている訳にはいかない。


「待て。この決闘には疑義がある」


 俺はマリーベルをかばうように前に出ると、アリッサに告げた。


「疑義、とは?」

 アリッサが俺に不審の目を向けてくる。


「そっちから会いに来たってことは、アリッサは最初からマリーベルと戦う用意があったと考えられる。だがマリーベルは朝一でいきなりアリッサに会って、動揺したまま何の用意もせずに、売り言葉に買い言葉で決闘に挑んだ。さすがにこれは不公平だと思わないか?」


「わたしは戦う準備なんてしてきていません。話の流れで決闘になっただけのことです」


 ま、本当だろうな。

 ローゼンベルクの姫騎士は、誰もが正々堂々の真向勝負を好む。

 不意打ちなんて卑怯な手を使うことはまずありえない。


 だが本当かどうかは今は関係ない。


「それは俺たちには分かりえないだろ? 5連覇中の最強王者が、不意打ちしてきた――なんて俺たちから疑念を持たれたままでいいのか?」


「ではどうしろと? まさか決闘をなかったことにしろとでも言いたいのですか?」


 そうだ、と言いたいところだが、さすがにそれは聞き入れられないだろう。


「そもそも決闘なんてする必要はないと思うんだよな。なにせ次のゴッド・オブ・ブレイビアで直接当たるんだ。そこで改めて白黒ハッキリ付ければいいだろ? 誰もが認める形でな」


「何回やっても、どれだけ準備をしてもわたしの勝利は変わりません。これが今の実力差です。神童と呼ばれた全盛期の頃のお姉さまならまだしも、長いブランク明けで勝てるほど、今のわたしは弱くありません」


「だからそれをハッキリさせようって言ってるのさ。それとも準備を整えたマリーベルに負けるのが怖いから、ここで結果を確定させようとしているのか? ずいぶんと余裕のないこったな」


「今の発言は聞き捨てなりませんね」


 アリッサの顔が不快感に歪む。

 よし、狙い通り俺の煽りにガッツリ食い付いてきたぞ。


「だってそうだろ? 絶対に勝つ自信があるなら、別に次のデュエルを待ったっていいよな? たった1週間後だぞ? 何が困るんだよ?」


「わたしはそれすらも時間の無駄だと言っているのです。それは実際に戦ったお姉さまが誰よりよく分かっているはずです」


「それは――」


 マリーベルが何かを言う前に、俺は先んじてアリッサに言葉を返した。


「どうせ当たるんだから無駄も何もないだろ? それにマリーベルが移籍したとしたら、週刊誌やゴシップ記者が俺たちのところにも話を聞きに来るはずだ。俺は言うぞ、不意打ちでしてやられたってな。あいつらはきっと面白おかしく書き立てるだろうな。大切なお姉さんの移籍には味噌がついて、ローゼンベルクの名声にも傷がつく」


「なんとも卑劣な物言いですね。このゲスが」


 アリッサが怒りをあらわに俺を睨んだ。

 おー、怖い。

 まだ10代なのにもの凄い眼力だ。


「大切なダブルエースの1人を引き抜かれるのを阻止するためなら、卑劣にもゲスにもなるさ。俺も生活がかかってるんでな。で、どうなんだ?」


「いいでしょう。改めて次戦の直接対決で雌雄を決するとしましょう。誰もが分かる形で、わたしの強さと勝利を見せつけてさしあげます」


「話が分かるようでなによりだ」


「あなたのようなゲスとお姉さまが、同じチームにいるのは耐えられません。必ずあなたの魔の手から救い出してみせます」


 アリッサは最後にそう言い残すと、クルリと(きびす)を返すと校門に向かって歩き出した。

 今日はもう帰るようで、振り返ることなく歩き去っていった。

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