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第38話 コービー牛・祝勝会

「それではライトニング・ブリッツの開幕5連勝を祝して乾杯!」

「「「「かんぱーい!」」」」


 高級コービー牛専門の焼肉屋に来た俺たちは、ミューレの音頭で乾杯をすると早速、肉を焼き始めた。


 しかも焼いているのはただのコービー牛ではない。

 A5等級と言われる最上級のコービー牛だ。


「A5等級のコービー牛なんて私、初めて食べました! はぅぅ、フワフワしていて、ジューシーで、甘くて、美味しいですぅ……」


 小さめの肉を一口、口に入れた途端にリュカの顔がとろっとろに(とろ)けた。

 なんかもう、幸せいっぱいって感じだ。


「……」

 その隣ではアスナが無言で肉を()んでいる。


 じっくりと味わうようにコービー牛を噛みしめるアスナの目は、これまたリュカと同じくとろんとしていた。


 っていうか、いつまで噛んでいるんだ。

 味わうにしても限度があるだろ。

 もう味なんてしてないだろ?

 いつまでも食べていたい気持ちは分かるが、美味しいうちに早く飲み込めよな。


 ま、かくいう俺も、あまりの柔らかさと濃厚さとジューシーさと旨さに、幸せの絶頂を感じているところなんだけどな!


 いやほんと!

 マジでこれ、美味しすぎだろ!


「世の中にこんなうまい肉があるなんてな。うまい……マジうまいよ。もうそれしか言えない……俺は今日、このコービー牛を食べるために生きていたんだな……」


 俺はコービー牛を飲み込むと、しみじみとつぶやいた。

 きっと俺の顔もとろんと(とろ)けているに違いなかった。


 そして残る2人。

 ミューレとマリーベルはというと、隣り合った席でゆったりとしたペースでコービー牛を食べていた。


 マリーベルと食事をするのは初めてだったんだけど、ミューレに向かってとても自然な笑顔を向けていることに少し驚かされる。

 相変わらず俺たちとは微妙に距離を取ってはいるが、ミューレに対してはどこにでもいる普通の女の子の顔をしているのだ。


 猫カフェの時に見たのと同じ顔だ。


「ミューレさん、ビールつぐね」

「お、ありがとう」


「お肉焼けてるよ? お皿出して。取ってあげる」

「すまないねぇ」


 ミューレのお酒をついであげたり肉を取ってあげたりする姿は、仲のいい姉妹のようだ。


 特上のコービー牛を堪能しながら、なんとはなしに2人のやり取りを眺めていると、


「ヤマトさんはお酒は飲まないんですか?」

 リュカがそんなことを聞いてきた。 


「リュカちゃんリュカちゃん。ヤマトは下戸なの。お酒を飲んだら、すぐ顔を真っ赤にして寝ちゃうから、飲まないようにしてるんだよね。ウケるー!」


 しかし俺が答える前に、アスナが笑いながら答えてしまう。


「そういうアスナだってたいして飲めないだろ。しかも絡み酒だし。っていうかもう飲んでるしさ。酔うと面倒くさいからあまり飲むなって、前から言ってるだろ」


「こんなの飲んだうちに入りませーん。つーかアンタはアタシの親かー! あははは、ヤマトが親だってー! ウケるー!」


「だめだこいつ、完全に出来上がってやがる……」


「リュカちゃんもちょっと飲む? 美味しいよ? こっそり大人の階段、登っちゃおう?」

「未成年に酒を勧めるなっての」


「冗談だってばー! ヤマトってば真面目ちゃん過ぎてマジウケるー!」


 うぜぇ……!

 アスナの絡み酒、超うぜぇ……!


「リュカ、こうなったら基本はスルーでいいぞ。どうせ素面(しらふ)になったらろくに覚えていないから、適当にあしらっておけばいい。まともに相手しても人生の無駄だからな」


「あははは……」


「それよりほら、肉がいい感じに焼けてるぞ。はいよっと」

「ありがとうございます」


 俺が肉を取ってあげるとリュカが嬉しそうに微笑んだ。


 その後、いつもより簡単にウケまくるアスナを横目に、俺はリュカとコービー牛を堪能した。


 残念ながらマリーベルと交流を深めることはできなかったけど、それでもミューレと仲良く話す場面は見ることができた。


 それだけでもまずは良しとしよう。

 とても小さな一歩だけど、決して無駄ではないはずだから。


 こうしてコービー牛・祝勝会は大きな進展も問題もなく、つつがなく終わったのだが――。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 高級な肉は肉の味や食感だけではなく 肉汁までかなり美味しいと思うので お皿へ山盛りにして肉の山を作って欲しいです。 [一言] この先も応援させて頂きます。
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