第24話「姫騎士デュエル・マスタールール第1条! ガードアウトした姫騎士は敗北となる!」
「くっ、まさか4部で1勝しかできない姫騎士が、これほど遠距離戦に優れているとは思わなかったわ……!」
キャサリンはいまいましそうに言うと、リュカをキッと睨みつける。
「この日のために、ヤマトさんやミューレさんやアスナさんが奔走してくれましたから。みんなの想いが、私を強くしてくれたんです」
しかしリュカは全く動じずに、冷静に言葉を返した。
「なにがみんなの想いよ! 調子に乗ってんじゃないわよ小娘!」
「まだやりますか? フェンリルの強さはもう十分に分かったはずです。あなたに勝ち目はありません」
リュカが『余計な一言』を言った。
しかしこれは俺がアスナにやったような『うっかり出てしまった余計な一言』ではない。
事前に予定されていた、キャサリンの怒りに火を注ぎ、冷静さを奪うために計画された『余計な一言』だ!
「たしかに遠距離戦はすごいわ。でもね! 接近戦は素人もいいとこなのは分かっているのよ! 近づかれたらアンタは何もできないんでしょうが! この大観衆の前で赤っ恥をかかされた恨みは、接近戦でボコボコにして晴らしてあげるわ! 出でよ、絶対なる盾! アイス・シールド!」
キャサリンが分厚く巨大な氷の盾を自身の周囲に展開すると、リュカとの距離を一直線に詰めにいく!
迎撃するフェンリルの攻撃にガシガシ削られてボロボロになりながらも、アイス・シールドはキャサリンへのダメージを防ぎきる。
その間にも、キャサリンとリュカの距離がみるみる縮まっていく。
だがそれも全ては、俺が用意した作戦通りだった。
(そろそろ決めるぞ)
(え?)
(目を離すなよアスナ。ここで決着だ。特等席からリュカの勝利を見届けてやれ)
接近さえすれば勝てると判断したキャサリンの、強引な接近行動。
キャサリンの強さの一端を担う『思い切りの良さ』は、しかし今日に限っては致命的な判断ミスとなる。
キャサリンの行動を完璧に読み切っていたリュカは、既に8枚全てのフェンリルを自身の正面に引き戻していた。
そして!
「フェンリル! ガトリング・フルバースト!」
リュカの正面に戻った8枚のフェンリルが、リュカの持つ膨大な魔力を間近で注ぎ込まれ、猛烈な連射を開始した!
さっきアスナも言っていたが、フェンリルとリュカが遠い距離にいる時は、魔力伝達のロスのせいで魔力消費が上がり、威力も下がる。
言い換えればフェンリルがリュカの近くにある時は、さらに高威力の、フェンリルの最大火力による攻撃が可能となるのだ!
「なっ!? ぐぅ! アイス・シールド!!」
キャサリンが氷の盾を再構築した。
今度は自身の正面に重ねるように展開する。
しかし分厚く重なった氷の盾は、ほんの一瞬だけ砲撃を受け止めた後、瞬く間に粉々になった。
大火力の魔力砲撃が激しい連射でキャサリンを襲い、その動きを完全に止める。
進むことすらできなくなったキャサリンは、完全に棒立ち状態のサンドバッグになった。
既にキャサリンの防御加護は危険域に達している。
もはや逆転の目は存在しない。
よし、リュカ。
もう終わりだ。
一気にケリをつけてやれ!
「なっ、くっ、そんな馬鹿な……! この私が! 前年ランキング2位のキャサリン・マオが、4部で1勝しかできないクズ姫騎士に負けるだなんて……そんな、そんな……っ!!」
「キャサリンさん。あなたの敗因はひとえに慢心です。ヤマトさんのデータやアドバイスを元に自己研鑽を行っていれば、あるいは違う展開もあったでしょう」
「ぐ、ぐぅ……!」
「フェンリルのスペックも、チーム登録のマジックウェポンととして、一部ですが公開されています。ですがあなたは私がフェンリルを使うことすら知らなかった。私を舐めて、勝つための準備を怠った」
「く、くぅ……!」
キャサリンがガクリとひざを折る。
メインスクリーンのライフゲージは既にドットしか残っていない。
「姫騎士デュエル・マスタールール第1条! ガードアウトした姫騎士は敗北となる! このデュエル、私の勝ちです!」
リュカが高々と宣言し、
「この私が! この私が! この私があああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ――――!」
ついにキャサリンの防御加護が0になった。
カンカンカンカンカンカンカンカン!
同時にデュエル終了を告げるゴングが盛大に鳴り響く!
「姫騎士デュエル・マスタールール第2条『ガードアウトした姫騎士を故意に攻撃してはならない』。ヤマトさんをバカにしたあなたに思うところがないわけではありません。ですがそれとこれとは話は別。ルールに則り、これ以上は攻撃しません。デュエル、ありがとうございました」
グラリと崩れ落ちたキャサリンに、勝利をしっかりと確認したリュカが礼儀正しく頭を下げた。




