第22話「ヤマトの仕業ね! フレースヴェルグにいた時に知り得た私の情報を利用して……!」
「そこです! フェンリル!」
ビュン、ビュンビュン!
「くっ、なっ、このっ! だめ、かわせない!? まさか回避先を読まれている? くっ、ヤマトの仕業ね! フレースヴェルグにいた時に知り得た私の情報を利用して……!」
キャサリンがデュエル中にもかかわらず、アリーナ脇のセコンド・エリアにいる俺をキッと睨みつけてきた。
(あはは、なんかこっち睨んでるよ。バカだねぇ。デュエル・アナリストをクビにしたら、当然データも一緒に流出するのにね! そんなこと小学生でも分かるでしょ? ウケるー!)
そんなキャサリンを見て、アスナが腹を抱えて笑う。
(だから普通なら、シーズン直前にデュエル・アナリストをクビにしたりはしない。ヤバいデータをいっぱい持たれているからな)
(それだけデュエル・アナリストをバカにしていたんでしょうね。マジヤバ、ウケるー!)
(俺が男だから、姫騎士デュエル・アナリストへの再就職は無理だろうって、たかをくくっていたのかもな)
正直、俺もそう思っていたし。
その日のうちに拾ってくれたミューレには感謝しかないよ。
(どっちにしろ、バカだね。ウケるー!)
(さっきからお前、ウケすぎだろ)
(だってウケるんだもん♪)
ウケるからウケる。
アホなJKよりもアホな、あまりに程度の低すぎる答えに、アスナが天才ってことを一瞬忘れそうになる俺だ。
でも今リュカとともに無双しているフェンリルを作ったのは、紛れもなくアスナなんだよな。
そして歓声がすごいので俺たちからの会話は聞こえていないはずだが、キャサリンはもう一度俺を強く睨むと、今度は回避ではなく反撃に出た。
「くっ、このっ! 行動分析で有利を取ったからって、あまり調子に乗らないことね! しょせんは4部で1勝のザコでしょうが! 穿て、フローズン・アロー!」
キャサリンの眼前に現れた50近い氷の矢が、絡み合うように連携を取って砲撃していた3枚のフェンリルの一群へと向かう!
が、しかし。
フェンリルたちは氷の矢と矢の間をスルリと抜けて、何ごともなかったかのように砲撃を継続してみせた。
「今のを避けたですって!? くっ、なんて繊細な動きができるの? く、くぅぅ! しかも小さいくせに、なんて高い威力! 防御加護がゴリゴリ削られていく……! くそっ、くそっ、くそくそくそっ!」
開始からわずかの時間で、キャサリンの防御加護はもう半分を下回っていた。
「言っておきますが、フェンリルの力はまだまだこんなものじゃありません。実戦での運用にもだいぶ慣れてきましたし、緊張もいい感じに解けてきました。ここからはギヤを上げていきます。フェンリル、もっと攻め立てて!」
フェンリルの動きと砲撃がさらに激しさを増し、キャサリンにまったく反撃を許さずに一方的にダメージを与えてゆく!
「このっ、4部あがりのクズ姫騎士が調子に乗って! 凍てつく嵐よ! ダイヤモンドダスト・ブリザード!」
キャサリンがフェンリルの猛攻をかいくぐりながら、わずかな隙をついて、猛烈な冷気で作られた水平方向の竜巻を、リュカに向けて撃ち放った。
(魔法の発動が早くてなめらかだ。決して隙とは言えないわずかの間隙をついて、高ランクの魔法をカウンターで放つとは、さすがキャサリンだな)
(ちょっとヤマト、どっちの味方しているのよ。この裏切り者! リュカちゃんの勝利とアタシの研究費がかかってるのよ!)
(いやいや、そんなんじゃないから。ただの行動分析だから)
俺の独り言を耳ざとく聞き咎めたアスナが、プリプリと怒る。
アスナはフェンリルの開発者ってのもあって、かなりこのデュエルに入れ込んでいるようだ。
しかし俺は、特に心配はしていなかった。
問題ない。
キャサリンが大の得意とするダイヤモンドダスト・ブリザードによる反撃は、当然、想定の範囲内だ。




