第16話 最終ミーティング
『さて皆さん! 今年もついにゴッド・オブ・ブレイビアの開幕を迎えました! 映えあるファースト・デュエルに選ばれたのは、昨年惜しくも2位に終わり、今年こそは悲願の初優勝を狙うフレースヴェルグ! 対するは昨年2部リーグを制して初の昇格を果たした、新進気鋭のライトニング・ブリッツだぁ! まずは両者の比較をしていきます!』
デュエル・スタジアムを盛り上げるマイクパフォーマンスを遠くに聞きながら、俺はライトニング・ブリッツのチーム控え室で、チームメンバーたちに最終ミーティングを行っていた。
控室にいるのは俺、リュカ、マリーベルのチームメンバーの3人とアスナだ。
アスナはフェンリルの開発者として、技術スタッフ扱いで臨時のチームスタッフになっていた。
……だってアスナが『アタシも行きたい! アタシにはその権利があるはず!』って駄々をこねるんだもん。
しかもフェンリルの操作を教える過程で、リュカとはすっかり仲良しになっていたみたいで、リュカまで『アスナさんがいてくれると私も心強いです』とか言い出すし。
ちなみにチームオーナーのミューレは、関係者への挨拶回りに奔走している。
いろいろとオフにゴタゴタがあったチームなので、回る場所も多いみたいでかなり大変なようだ。
この前のフェンリルの登録申請もそうだけど、姫騎士デュエル連盟にもかなり迷惑をかけているしな。
そのためデュエル直前の今になってもまだ、ミューレは戻ってきていなかった。
「今さらだが、気を引き締めるために改めて聞いて欲しい。ゴッド・オブ・ブレイビアは3人1組のチーム戦。それぞれ1試合ずつデュエルをして2勝した方が勝ちとなる」
俺の言葉にマリーベルは小さくうなずき、リュカはふんふんと大きく顔を上下させる。
アスナは話の邪魔しないように静かにしてくれていた。
アスナは基本的に空気が読める子なのだ。
「開幕戦、残念ながらうちのチームは姫騎士が2人しかいない。つまり1敗した状態から始まる。当然、俺たちが勝つには残る2戦で、2勝するしかない」
このチームはまだ姫騎士が3人揃っていないから、これはもう仕方ない。
目指すは2勝1不戦敗での勝利だ。
「先鋒戦はこちらの不戦敗。中堅はリュカ。大将はマリーベルでいく。これも事前に説明した通りだ」
「了解よ」
「分かりました」
「次は個別の復習だ。まずはリュカ」
「はい!」
リュカが背筋をピンと伸ばして傾聴の姿勢を取った。
「相手は昨年個人ランキング2位のキャサリンだが、俺は勝てると思っている。プランも示したが、それを強制するつもりはない。戦うのはあくまでリュカだ。俺の戦術を参考にしつつ、それをベースに臨機応変に勝利を目指してくれ。リュカは頭がいいからな、やれるはずだ」
「分かりました」
「なにか質問はあるか?」
「ありません。ヤマトさんの作戦も、ヤマトさんが用意してくれたキャサリンさんの対策データも全て頭に入れましたから、大丈夫です!」
わずか2日で、フェンリルの習熟訓練と並行して、個人対策も頭に入れてしまう。
運動神経が壊滅的なこと以外は、リュカは本当にずば抜けた才能を持っていた。
「OK。次にマリーベルに関しては俺はノータッチだが、ミューレからは何の問題もないって聞いている。俺はミューレを信頼しているから、当然ミューレの言葉も信頼しているし、マリーベルもやってくれると思っている」
「もちろん勝つわよ。私はこんなところで負けていられないから」
「その意気だ。期待してる」
昨年2位のフレースヴェルグを相手に『こんなところ』と言ってのけるか。
ミューレは『姫騎士としての強さについては私が保証する』とまで言っていたし、実際に相当戦えるんだろうな。
ま、これ以上は俺が考えても仕方ない。
裏方の俺にできるのは、姫騎士を信じて送り出すことだけなのだから。
「じゃあそろそろデュエル・スタジアムに行こうか。俺とアスナはセコンドエリアにいるから、デュエル開始までに何か困ったことがあったら、すぐに相談に来てくれ。それとアスナ、いいか?」
ここまで黙って聞きに徹してくれていたアスナに俺は一言かけた。
「なに?」
「サイン色紙とペンは置いていってくれ」
「はぁ!? サイン色紙を持っていないと、アリッサ・カガヤ・ローゼンベルクに偶然出くわした時にサインを貰えないじゃないの!」
「恥ずかしいから貰いに行くなって言ってるんだよ!」
「なんでよ。ヤマトが貰ってきてくれないから、自分で貰おうと思っているんでしょ」
「おいこら。おまえさてはそのために、チーム関係者として入れてくれってゴネたな? 関係者パスがあれば、メディアすら入れないところまで楽に入れるからな」
「てへっ♪ というわけでこれは置いていけません」
アスナがサイン色紙をギュッと守るように抱きしめる。
「はぁ……分かったよ。でもほどほどにしてくれな? あくまで俺たちは裏方なんだからさ」
「ラジャー!」
とまぁ、最後になんとも緊張感に欠けるやり取りがあったものの。
開幕デュエルに向けて、俺たち4人は控室を出たのだが――そこには意外な人物が待ち受けていた。




