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ねこはどこだ?  作者: nasuda
8/12

七 猫を探して

猫騒ぎはひとまず落ち着いた。しかし、犯人の目的すら検討も出来ない。

明希達は犯人に迫れるのか?

 明希から命じられて、あたしは情報の洗い直しに取り掛かった。

 まずは被害届。そして人に戻るまでの日数。そして聞き込みの情報、それに加えて被害者への確認。

 三日間この三つをまとめて、わかった事が一つある。

「ホンッと! 戻っても届けないの!」

「なるほど」

 遅い夕食をとりながら、あたしは明希にグチった。

「この人まだ戻ってないな、って思って確認で電話すると『あ、連絡忘れてました』ってホンッとバカにしてると思わない」

「確かにね」

 自分で命じた事なので、明希もあたしのグチを邪険にしない。

 それどころか、遅くなるあたしのために晩御飯まで作ってくれた。

 ご飯とお味噌汁と、焼き魚とかレトルトのハンバーグみたいな簡単なおかず。

 もう、それだけで嬉しくって明日も頑張ろうって思えた。

 ちなみに、今日はレトルトのハンバーグとご飯とお味噌汁。なんと、サラダまでついている。

 多分、買って来た物だけど嬉しい。

「人間は日常に戻ると、それまでの事を忘れるものだな」

「そういうモンなの?」

 珍しく物分かりのいいような事を言う明希に、あたしは驚いた。

「というか、困ってない人は声を出さない程度の話だと思うが。逆に猫になっても困ってない人は、被害届を出して無いかもな」

「えー、そんな人いる?」

「猫好きの独居老人……とか、すまない、思いつきだった」

「あーでも、猫のまま亡くなった人とかは被害届が出ないかも?」

「その場合、どうなるのか。人に戻るのか、猫のままか? もし猫のままだと行方不明者になってるかもしれない」

 そこに思い至って明希は、渋い顔になった。もし、犯人の狙いが殺人の隠蔽ならば、被害者は行方不明のままで、事件が終わってしまうかもしれない。

「今のチェック、一回終わったら事件前後の行方不明者も洗う? あたしは別にいいよ、まだまだ元気だし」

 本当は少し疲れて来ていたけど、恋人の明希が言うなら、もう少し頑張っちゃおうと思っていた。

「ダメだ、手を広げるなら今の線を終わらせてからだ。それに……環の体にも良くない」

「明希……」

 あたしは、明希がいつになく真剣な表情をしてくれた事がうれしかった。

「無理はしないで、環」

「うん、わかった」

 あたしは、ちょっとぽーっとしながら答えた。

 明希があたしの事を心配してくれている事が、すごく嬉しかった。

「ご飯食べたら、今日は寝て。あとはやっておくから」

「ありがとう、明希」

 そう言われて、明希は少し照れたように答えた。

「無理をお願いしているのは、私だから……」

 あたしは変わり者の上司で、優しい恋人のためにも明日も頑張る! そう心に誓った。

次回は12/26火曜日の8時更新予定です。

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