1 茜さんと僕
またまた短いです。
「会長、吹奏楽部の部費の詳細ですが、不明瞭な点が多すぎます!どうしますか?」
「見せてくれる?……確かにこれでは全く詳細になっていないわね。私が直接吹奏楽部へ行ってくるわ。」
「あ、ありがとうございます!私が行ってものらりくらり話を逸らしてくるので助かります!」
ここは生徒会室。放課後帰宅部以外は活動しているだろう。
生徒会でやはり皆から頼りにされているのは生徒会長である、奥田茜さん。
高校3年生で圧倒的な人気で生徒会長になった才色兼備な女性。
何を隠そう僕の幼馴染で恋人である。
「冬木君?ボーっとしてないで仕事してくれる?会長を少しは見習ってよ!」
生徒会の一人から怒られているのは、僕、冬木大介、高校2年生。一応生徒会には所属しているが、雑用係だ。
何故僕のような平凡な生徒が生徒会に入ったかというと、部活に入りたくなかったのもあったが、茜さんがいるからだ。
少しでも茜さんの役に立ちたくて生徒会に入った。役に立っているかは別として。
「冬木君、私の代わりに書類まとめといてくれる?」
茜さんが声を掛けてくれる。気を使ってくれたのかな?
「はい、わかりました!」
そう言って、書類の整理を始める。
「…雑用しか頼めないんだよな~。」
陰口を茜さんに聞こえないように言っているのが聞こえてくるが、気にしないようにする。
気にしていたら茜さんの隣には居られない。
家に帰ると、茜さんがやって来た。
「いつもありがとね!助かってるよ!大介!」
「いいよ、自分がしたくてしてるんだから。茜さんも無理しないでね。」
2人になるといつもの呼び方になる。
茜さんと僕は小学校の頃、僕が引っ越してきた時からの付き合いだ。
家が近所で当時遊び相手がいなかった僕に1つ年上のお姉ちゃんとして接してくれた。
いつも僕を引っ張ってくれて茜さんはとても活発な女の子だった。
成績も良くスポーツも出来たので、人気者だったが、何故か僕とずっと一緒にいた。
理由を聞いたら、みんな茜さんの事を何でも出来る子として扱い、息が詰まるとの事だった。
「本当の私を知っているのは大介だけだよ。」
小学校5年生の頃、ボソッと僕に打ち明けてくれた茜さんの言葉は忘れない。
それから高校まで茜さんを追い掛けて見事合格し、同じ高校へ通うことが出来た。
そんな茜さんに僕は憧れと恋心を抱いていたが、なんと茜さんから告白された。
「出来れば大介にはずっと傍に居て欲しい。好きです。付き合ってください。」
今は付き合って半年、学校では付き合っていることは内緒にしている。
「私と付き合っているのがバレたら大介に迷惑かけそうだし、内緒にした方がいいよ。」
「わかった。僕なんかが彼氏だとバレると茜さんにも迷惑かけそうだし、それでいいよ。」
「そんなことないよ!そうじゃなくて、私のキャラ的にね?大介に何かあったら嫌なの。」
茜さん、人気あるからなぁ。何かされる心配でもしてくれてるのか?
「うん、わかってるよ。でも学校では一緒に居られない分、2人での時間は大事にしたいかな?」
「もちろんだよ!それは私もそう思ってる!」
そんな感じで今日もキスをして茜さんは帰っていった。