So long! さようなら! 55-2
55-2.
その後、たまに孝則から歩に部活帰りの送迎をしようかと
打診があったけれど、歩は適当な言葉で断った。孝則の方も
女の事で忙しいのか追求もせずあっさりとしたものだった。
女のことに神経がイっており、歩の様子や言動の変化にも気付
いてないようだった。
あの父親にとってオレって結局何なのだろう?
たまたま産まれてきてたまたま血が繋がってて・・だけど
ほとんど一緒に暮らすこともなく、可愛がられたこともなく
ペット以下の存在じゃんっ!
全く酷い奴じゃないか!
この先母親や自分にどんな甘言を囁いてきたとしても、もう
相手にはしない、歩はそう心に誓った。それは悲しい誓い
だった。
その日から時々、付かず離れずサッカーの試合があれば
連れて行ってくれたり、大学で練習試合があれば参加させて
くれたり、交流を続けている南山は歩の身近にいる唯一の
大人の男性で、いつしか歩は南山のことを頼りにするように
なっていた。
何を頼むでなく、泣きついて行くような問題を抱えている
わけでもないが、例えばサッカーだけの細い繋がりだとしても
身近に大人の見知っている男性がいるだけで安心感があった。