So long! さようなら! 54
54.
『歩、実はね・・・』
「かあさん、今日改めてかあさんと南山さん見てて思ったン
だけどさ、ふたり結構お似合いじゃんっ!
まぁ、オレっていうでっかいコブ付きじゃあ望み薄だけどさ
今からでもアタックしてみたら? なぁ~んちゃってぇ~」
『歩、どうしちゃったの? お父さんとの復縁を一番望んで
いるのは歩だと思ってたから、かなりそれってびっくら発言
だわ』
「そうだよね、お父さんが会いに来てくれるようになって
お母さんのこともこれから大切にするっていうから、それなら
家族が増えて3人でって思ってたけど・・・。
口先だけだったンだよ、アイツ! 」
『歩、何かあったの? 』
「昨日、いつも対戦してる学校で練習試合があって、終わっ
て校門出たら、親父の乗ってるのと同じ車がすぐ側にあった
んだ。約束してないし最近音信不通だったし、だけど気に
なって確かめたくなったんだ。人影が見えてたしね。
近付くと親父だったから、更に近付いて声を掛けようとしたら
助手席に若い派手な女が座ってて、ぎゃあぎゃあ喚いてる
風だった。だから声は掛けなかった。
その内女が泣き出して・・・
親父が抱き寄せて・・・
キスが始まって・・・
もうオレ見てらンなくて、その場から離れた。
こんな事話してゴメン! 絶対母さんには内緒にしておこ
うって思ってたのに。思い出したらムカついて腹が立って
・・・ごめん。
かあさん、親父はやっぱりロクデなしだ。今度虫のいいこと
言って来ても騙されちゃぁ駄目だ。あんなに母さんを大切
大事にするって何度も言っておきながら何であんなロクデも
ないことができんだよぉ! 」
歩は切々と言い放ち、泣いた。
自分の部屋に入る息子に「歩・・・」
としか声をかけられなかった。