So long! さようなら! 50
50.
クライアントとして義兄(渡邉孝則)と一緒に件の店に
行ったKさんは商談の電話が入ったので静かな場所で話を
してくると伝え、店の中で義兄が1人で居る時間を40分程
作ったそうだ。
その間、撮影隊は残りフィルムを回し続けていた。
案の定、義兄にひとりの若い子が近付いて来てふたりは
楽し気に話し出し、クライアントのKさんが席に戻るまで
延々、話し込んでいたらしい。
その後、興信所の人に一週間義兄の行動を張り込んで
もらっていたが不審な様子はなく、この結果が良かったのか
悪かったのか判定をつけられぬまま、この事実を義姉に連絡
することとなった。
鉄平さんからはこれ以上義兄を追跡しても無駄じゃないのか
なんて言われたけれど、何故か釈然とせず私はその後も続けて
調査を依頼した。
念には念を!
私の釈然としない、という自分だけが持つ特別なアンテナは
大当たりだった。
義兄の性根はちっとも治っていなかった。
例の店で出会った女の子とその後、接触していることが報告書に
あがってきた。
3日と空けず逢っているようだ。
あの男はお義姉さんや歩くんのこと、一体どうするつもりなりかしら。
また昔のように他所の女を追い掛け回してて、随分ご執心のようだ。
この調子だと義姉のところへ通うのもバッタリ途絶えるに違いない。
義姉に何て言えばいいのかと思う一方で、これが再婚後じゃなくて
今判って良かったのだとポジティブに考えることにした。