So long! さようなら! 33
33.
間宮順子:
私が1才年上の渡邉孝則と離婚したのは、かれこれ10年も前のこと。
ひとり息子の歩が6才の時だった。
仕事絡みで上司に連れて行かれたキャバクラで10才も年下の
若い子にのめり込み、けれどそれを隠したまま、妻の私に
醒めただの家に居ても安らぎがないだのと、ひたすら私を責めるばかり。
一生懸命なんとか夫の気持ちを自分に振り向かせようと
毎日の食事の献立にも気を遣い忙しい中、部屋の整理整頓
にも努め明るく過ごしたけれど、暴言は日増しに酷くなる
ばかりで心身共にボロボロになった私は、とうとう離婚届に
判をついてしまった。
自分に好きな女性が出来たことはひたすら隠したまま、ただ
ただ、私の自分に対する冷たい態度に醒めたと言い放った
ものだから、義両親からも悪者扱いで酷い言葉を浴びせ
られた。
私と離婚が決まっても今まであんなに可愛い
がっていたにも拘わらず、歩のことは何も言わない。
腑に落ちなかった。
離婚後、程無くしてその理由が判った。
半年も経たない内に若い子と結婚していた。
その女性に夢中で息子の歩のことでさえ、もはや眼中になかったのだろう。
ある日のこと、元夫の職場の女性同僚とばったり買い物先で
会いその理由を知らされたのだ。
申し訳なさそうに彼女は言った。
もしかして、離婚される前から元のご主人が今の奥さんと
付き合ってたことはご存知なかったのですか、と。
直属の上司が連れて行った店で出会った女性だったようで
一緒に遊んだ同僚等は、遊びで終わるだろうと見ていた
らしいが、あれよあれよという間に離婚しその女性と再婚
したので、皆吃驚していたらしい。
知らぬは元妻ばかり。
もっと早く知っていれば、その時はすぐにそう思ったけれど
知っていればどうだったというのだ、と自分に問い掛けてみた。
離婚の後で知って良かったのだと思うことにした。