So long! さようなら! 19
19.
「修ちゃん、私がどうしてこんな風に2人の話し合いにこの家を
提供したか、もう判るよね」
「あぁ、判ってる。
姉さん俺ね、妻子を捨てて里子と一緒になって生活するようになってから
すぐに里子を選んだことが大きな間違いだったってことに気付いた。
だけど遥のところに戻る勇気も里子のところから逃げ出す勇気もなくって
ここまで来てしまった。
ほんとに意気地のない男なんだ、僕って奴は」
「そっか、じゃぁ今回のことで遥ちゃんが修ちゃんを引き受けら
れなくても恨んだりするのは筋違いってことも敢えて私が説明しなくても
理解出来るよね? 」
「あぁ、引き受けると言われたとしてもどの面下げてだよ。
行けるはずないさ。
逆にややこしい保険関係のことでいろいろと尽力してもらって感謝してる。
これからの僕や姉さんの生活に関わってくることだからね」
「あんな女の尻を追いかけて行ったりせず、一度は不倫を許してくれた
遥ちゃんを大事にしていたら、修ちゃんがどんなことになろうとも
力の限りご両親に頭を下げてでも最後まで面倒看てくれたのよ
遥ちゃんはそういう人。
片や、自分が困った時は助けて貰っていても、助けてくれた人が
困った時には上手いこと言って逃げて行く人が、修ちゃんが
追いかけて行った女、里子さんなんだよ。
修ちゃんは自分の欲の為に妻子を見捨てた残念な人間だってこと
忘れてはいけないと思うよ」
今まで涙を見せなかった弟が目の前で涙を零した。