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So long! さようなら! 16-2
16-2.
「あら、この世知辛い世の中を渡って行くのに嘘も方便なんて
当たり前のことよ。
とにかく昔のことを今どうのこうのってもういいでしょ?
あなたは修造に捨てられて選ばれなかった。
それは事実なんだから蒸し返すとみじめになるのはそっちじゃないの?
私はこれからのことを話したいのよ。
あなたが嫌だって言ったって絶対返すから。
私だって生活かかっんのよ一歩も引かないからね」
里子の一方的な理屈も何もない剣幕に、呆れるやら腹が立つやら。
しかし、この強突く張りな女、自動車保険の特約のことを知ったら
どうするだろう、なぁ~んてことがチラっと頭に浮かんだ。
それに治らない重い障害の場合、ちゃんとした診断書があれば
福祉のほうからもそう多くは望めないにしても、幾ばくかは
出るはず。
なので、普通にパートでもいいから一生懸命働けば生活は成り立つはず。
この女ときたら、1mmの努力もする気はサラサラNothingのようだ。
呆れてものが言えない。
修造ももう少しまともな女を相手にすることは出来なかったのかと
今更ながら腹が立った。