運命の始まり
すみません、前から空きが空いてしまいました。だが絶対に投稿はするのだ。
な
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2021年7月25日(金曜日) 午後12時2分
三紋慈高校 保健医療室 1階
ゆっくりと瞼を開く。どうやらベッドにいるらしいが…視界がぼやけており思考も落ち着かない。俺は何があってここにいるんだ。そう思っていると女性の声が聞こえた。
「やっと目を覚ましたのかい?ねぼすけくん。」
すうっと視界が戻ってきた。おかげでよく顔も見える。この人は確か…そうだ、保健室の亜救先生だ。
「…あのなんで僕はここにいるんです?」
「君は廊下でコケて頭を打ったらしい。寺門君がそう言っていたよ。」
僕が?頭を?馬鹿な…だとしたら頭を打った時の記憶があるはずだ。
「……じゃあ、何で僕が頭を打ったときの記憶がないんですか?」
「頭を強く打った時、その前後の記憶が無くなるというのはよくある話さ。脳震盪というんだが。まあ、無事で良かった。下手をすれば死んでいたんだからね。」
死、という言葉が頭に引っかかる。なんだか最近どこかで…
「いいかい?今回は軽症ですんだから良いが、今度から廊下で走るなんて危険な真似はやめたまえ。死というのは身近にあるものだ。それを完全に退ける事は不可能に近い。そんな中君は今まで生きてこれたんだ。それがどれだけ幸運なのか、よく考えておきたまえ。」
…死…
「わ、分かりました。これからは廊下で走りません!」
「分かればよろしい。さ、君達のクラスは今の時間は幽世学の授業だったな?既に2時間授業の内1時間使ってしまっているが、今からでも遅くはない。安全に、そして手早く行きな。」
「はい!」
僕は保健室から出るなり早歩きで幽世学室に向かう。後で寺門君にもお礼言わないと…
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2021年7月25日(金曜日) 午後12時4分
三紋慈高校 幽世学室
「あ、危なかった。なんとか間に合った…」
授業時間になんとか間に合った…
「遅いぞ大和。1時間目すっぽかしやがって…まあそれより怪我はどうだった?結構強く打ってたが…」
「大丈夫らしいから、あんまり心配しなくてもいいよ。」
僕はそう伝えた。先生は軽症と言っていたが、まあ今の所特に問題はなさそうだ。
「そういうのが一番信じらんねえだよ。」
彼が少し怒ったような感じで喋る。
「お前さ、他の人に心配させたくないからってよくそう言うよな。それがな、俺にとって怖いんだよ。お前多分死にかけでもそれ言うよな。やめてくれ。」
彼が溜息をつく。
「いや本当に大丈夫だって。それに死にかけだったらちゃんと助けは呼ぶよ。うん、絶った…」
キーンコーンカーンコーン。授業のチャイムだ。
僕は机に向かう。
「はいはい、ばか騒ぎする休み時間は終わったぞ。今から3時間目とは別のムービー流すから、それについてよーく考えるように!」
そう言って投影機のスイッチを押す。
さて、今回の映像はなんだろう。
映写機から放たれた光が、スクリーンに沢山の地球を映す。
「平行世界、貴方はそんな事について考えた事はありますか?」
よく見ると、それぞれの地球は自分達の地球とは違うのが分かる。妙に黒かったり、逆に真っ赤に燃えそうな物もあったからだ。
「平行世界というものは無限大です。例えば貴方が死んでしまった世界。貴方という存在の性別が違っていた世界。もしもの数だけ世界は存在する…それが平行世界という概念です。」
僕はヒーローが好きだからそういう設定はよく知っている。
「平行世界というものがどうやって誕生しているかは分かっていません。というより、平行世界というものがあるという様に断言できません。なぜなら、平行世界を我々人類は観測する事が出来ないからです。ですが、限りなく高い可能性である、という風に考えられています。」
そうなのか。あれはSFや特撮物だけの設定かと思ってた。
「我々が住まうこの地球…そしてそれらを覆う宇宙…その宇宙の大きさは有限、または無限のどちらかですが、無限と仮定した時にある考えが発生します。それは我々の地球と全く同じ…はたまた少しだけ違うだけで同じ様な人間が存在する、という様な考えです。」
そうか…宇宙は確かに広い。もしかしたら、本当にもしかしたら天文学的確率であるのかもしれない。
「この可能性は限りなく0に近いものですが、0ではありません。また、他の考えでは……」
この後もずっと平行世界がどうとか、難しい話が続いた。
頭が痛かった。
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2021年7月25日(金曜日) 午後12時56分
三紋慈高校 1-こ 3階
「ふぅ〜やっと飯だ!あ、今日のお前の弁当なんだ?肉があったら一個くれ!母ちゃんいっっつも野菜ばっかなんだよ!頼む!!」
寺門が手を合わせて頼み込んでくる。
「まあまあ、待ってよ。まずはお互い自分の弁当箱を開けてからそういうのを言うんだよ。」
そう言いながら弁当箱を開ける。くっ…自分で作っておきながらあれだが、凄まじい見た目だ。おぞましい。変な匂いがしないだけ上出来だろう、うん。
「俺はせっかちなんだよ!さ、お前の肉を…やっぱ凄え見た目だな、お前の弁当!でも肉っぽいのもあるしいただきまぁす!」
「あ!ちょちょっと待って寺門君!そういえば味見するのすっかり忘れて…て…」
駄目だった。もう口に入れてしまっていた。
「まあまあじゃねえか、味は………うっ!」
彼の手から橋がこぼれ落ちた。嫌な予感がする。
「胃が爆発しそう……やべ…吐くおえぇええ…」
いつもはここまで酷くはなかったのに。匂いがなかったのが逆にやばかったのかな?…
「………今度は……俺が……保健室送りかよ……ぐはっ…」
そういって彼は保健医療室送りとなった。午後の授業は正直、寺門君の事が気が気でなかったので頭に入ってこなかった。
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2021年7月25日(金曜日) 午後15時30分
三紋慈高校 下駄箱 1階
「寺門君、ほんとに大丈夫?…ごめんね。僕、やっぱりまだ料理下手くそだったよ。」
僕は靴をスニーカーに履き替えながらそう言った。
「あれは下手くそとかそういう次元じゃ…まあいいって、2、3発出したらすっかり元気になったぜ?」
彼が若干青ざめた顔で笑ってそういった。
「うん…良かった。本当に…」
数少ない友人を失うところだった。……もっと料理の勉強をしよう。
「じゃ、ここでお別れだな。明日どっか遊びに行くか?」
彼がそう提案してくる。僕の料理で致命傷を受けているのに優しいな…
「いや…料理の勉強するよ。同じ事を起こさない為にも。」
「分かった。ただ、今日のよりは美味くしろよ!そしたらまた俺が食ってやる!それじゃな!」
彼がそう言い放って走って行った。帰る場所が真反対じゃなかったらもっと喋れたのになあ…まあそれで彼の家の事情が何か変わるわけでもないし、帰るか…
僕は自分の自転車に乗り、焦る様に走って帰った。
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2021年7月25日(金曜日) 午後16時2分
我が家
「ただいまー」
玄関の扉を開けながら普通の、当たり前の言葉を言う。家族はいないが礼儀というものだ。
する事も無いので僕はいそいそと二階の自室へと上がっていった。
「先に失礼している。はじめまして…というべきだろうか?」
自室のドアを開けたら不審者…にしては少し異常な、お嬢様みたいな見た目の人が正座していた。
「あ、あの…一体どちら様で…?」
その見た目では多分襲っては来ないだろう…というのと、最初に普通に語りかけて来たことを踏まえて警察にダッシュはしないで僕の疑問を投げかけた。
「あっ…そうだったな…今思い出させてやろう…。」
そういって彼女は…瞬きをしたその一瞬で僕に近づき、僕の頭に手を置いた。なんだか安心する…?
「今から君に思い出させるモノは君に驚嘆、恐怖を与えるだろう。備えておいたほうが良い。」
え、という間もなく頭に何かが流れ込んでくる。
━━多くの首無し死体 血 臓物 魔法陣━━
これは…2時間目の頭を打った時の本当の記憶っ!…
「う…ぉぇ…」
情報が多すぎる。苦手な血まで。吐きそうだ。
「…すまない。だがこれは君がこれから与えられる運命に立ち向かう為には必要なのだ。それを分かって欲しい。」
運命?なんだそれは…
「っ…運命って…?」
彼女は迷いなく言った。
「戦いだ。君には戦いが待っている。」
さあ、一気に進むぞー
読んでいただいた全ての人に幸あれ!