誰が教えたの
結婚記念日にケーキを買ってきた。チョコレートでコーティングされた黒一色のシンプルなケーキ。
飾りはチョコレートのプレートに白文字で「結婚12年目」だけ。
帰宅したケーキを待ち受けるのは末の娘ちゃんを筆頭に3人の子供検閲官たち。
軽い尋問から始まる。
長兄:「本日は誕生日の予定はないが、なぜケーキを所持しているのか」
父:「……」
長兄:「怪しいぞ。|何かやましいことがあるのか《結婚記念日でしょ》」
父:「す、鋭いね」
長兄:「他には何を所持しているのか。全部だしなさい」
所持品の検閲が始まった。
長姉と末の娘:「この黒いプレートはなんだ。怪しいぞ、検分する」
ほどなくして検閲を通過して無事に冷蔵庫へ収まった。
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食事が終わり、記念写真も撮り終えたらケーキカットのお時間です。
ナイフを見つめ譲り合うなか、長兄が渋々の体で立候補した。
一筋、二筋いれたあたりでニヤついた。最後の一筋が明らかに逸れて、大きめのカットが二つできあがった。
切り終えたナイフを置くとすかさず指差したのは長兄だ。
長兄:「僕これ」
自分で切って自分で選ぶ。満面の笑みを見せる長兄、とそこへもう一声かかる。
長姉:「あたしはこれ」
長兄の思惑に乗っかった長姉。してやったりの澄まし顔。
自分の時間とタイミングで生きている末の娘ちゃんは、体と年齢に合わせて少し小さめを選択する。
甘いもの、おやつ、アイスクリーム。別腹いっぱい、夢いっぱいの末の娘ちゃんはなぜかケーキには興味が薄い。
周りが食べはじめたのを見て、真似するように一口パクリ。突然、全開食べ進む。
末の娘:「ヤッベ…ヤッベ…ウマウマ」
一口ごとに「ヤッベ」を繰返しご満悦。サムズアップでどや顔キメポーズで父にウインクする。
母:「いくつよ…」
ボソッと呟く母の声に、真顔で答える末の娘ちゃん。
「さんさいです」
家族全員、大笑い。
澄ました態度でケーキを完食してました。