2
新たに人間を見たという情報を聞いたのはユフィと生活するようになって1か月程経った頃の事だった。
鷹さんや雀さんは既にこの森に帰ってきており、彼らが言う街の特徴はどれもユフィの住む街の特徴とは当てはまらなかったようで意気消沈していたのだが、ここにきてまさかの事態だった。
鷹さんが言うその人間の特徴はユフィの護衛との特徴と一致するとのことでまずはその人間を見に行こうと言う話になり、ユフィを護衛しながら森の中を進んでいく。
メンバーは私とユフィ、鷹さんと鹿さんだ。本当は熊さんに頼もうかなとも思ったのだが、熊さんだと向こうの人間が警戒する可能性が非常に高くなるとユフィが言うので、落ち着いた雰囲気のある鹿さんに同行をお願いした次第だ。
流石優しい鹿さんは二つ返事で了承してくれて、あとで果物を分ける事になっている。鹿さん好き。
鷹さんは口調は悪いが凄く面倒見の良い兄貴分だ。狼たちが亡くなってからはかなり頻繁に私のところに顔をだして色々なものをおすそ分けしてくれるし、私が狩りしている間ユフィを守っていてくれたりもする。
『おう、あともうちょっとだぞマヤ。向こうはこっちの気配に気付いたようだ』
鷹さんが近付いてきてそう告げてきた。どうやら向こうの人間がこちらに気が付いたらしい。
『早いね……。警戒されてる?』
『かなり。気ィ付けな』
『うん』
向こうとこちらではまだまだ大分離れているとは思うのだが………。ユフィにそのことを伝えれば護衛の中に気配察知スキルを持つ人がいるとの事なので、ユフィの知り合いである可能性はかなり高くなってきた。
しかし万が一ユフィの命を狙う方の人間だったら目も当てられない。私は慎重に動こうと昔よりも大きく立派になった弓に手を添えた。
姿が見えてきた。相手側は魔法で光を灯しているようでかなり発見しやすい。あんなんじゃ魔獣や獣に『襲ってください』と言っているようなものじゃないか、と思ったがどうやらそうでもないらしい。
「あの光は魔獣除けの効果も入っていますので」
使える人はかなり限られていますけど、とユフィはつづけた。なるほどなんて便利な。
まあ私は獣たちのおかげで夜目がきくようになったし、魔獣は私にとって色々と必要なものなので遠ざけてしまうわけにもいかないのだけど。
向こうの人間は5人。
一番先頭には鎧を着たかなり体格の良い女性が一人。殆ど顔も隠れてしまっているが胸の形だけ強調されたようなあのデザインは間違いなく女性、だと思う。
そのすぐ左後ろにいるのが鎧を着た銀髪の男性。ガッチガチに鎧を着ているわけでもなく要所要所、必要な場所にというスタンスらしい。マントまで羽織ってるその姿はまさに”騎士”って感じだ。
女性の左後ろにはかなり軽装な女性が一人。あちこち肌が見えているのがなんともけしからん。黒い髪に褐色の肌がエロチックです。ゲームで言う”シーフ”的な役割かと思われる。
あと後ろに2人いるのは見えるのだが、流石にチラ見できる程度でどんな感じかは確認できないが……。パーティー的に考えるとしたら後は”ヒーラー”と”魔術師”、もしくは”アーチャー”的な感じかもしれないな。
もう少し近付いていけば向こうもこっちの姿が見えたらしい。
「ユフィ―リア様!!」
軽装の女性がものすごいスピードでユフィに近付いてその細身の体をぎゅうと抱きしめた。敵意はないのを確認して練りこんでいた魔力を分散させる。
「リャミア………、来てくださったのですね」
シーフ姿の女性は”リャミア”という名のようだ。10歳のユフィより小さい体だが顔立ちは大人びていてユフィとの年齢差をきちんと感じる程だ。というよりユフィが大きめなのかな?私よりは小さいけど………。
後方にいた4人もあわててこっちに向かってきて、ユフィとの再会を喜んでいる。毛皮を使用したフードをかぶっているとは言え覗き込まれたら面倒なので少し後ずさって距離を取った。
暇なので残り2人の観察をすることにした。
1人はホワイトグレーの衣装を着た幼い男の子だ。複雑な形状で、先端に魔石のような石が付いている杖を持っているところから見るにこの人が”ヒーラー”だろう。まさか幼い男の子だとは思わなかったが。
そして最後の一人は全身黒い服を着た男性だ。片手には本を持っている。多分魔法使いだと思う。フードを深くかぶっていて顔があまり見えないが口元を見る限り結構な老人のようだ。