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ジークさんが言う事には、私にお礼がしたいという建前が半分、そしてちょっとした”お願い”が半分あってジークさんとこの腕輪をよこしたらしい。
どういうことかと問いかければそんなに難しい事ではなかった。
ユフィ……、いやユフィ―リア様はとある国の王太子の婚約者様であり、世代交代した暁にはお后様となるらしい。とんでもねぇ権力者だった。
んで、実はその王太子には弟がいてそいつが王位継承権を欲している……、まあ簡単に言えば御家騒動である。それに巻き込まれる形でユフィは今命を狙われており信頼できる人間がほとんど存在しない。
「ですのでマヤ様を是非護衛として加えたいとおっしゃっております」
恩人に向かってあの子は恩を返すんじゃなくて面倒ごとを押し付けてきやがった、と思わないでもないがあんな小さい子(4歳くらいしか差はないが)がそんな目にあっているのは確かに可哀そうだとは思う。
しかしだ。そんな権力者にこんなどこの馬の骨かもわからぬ人……どころか化け物(私的には獣人なのだけど)を置いておくのも却ってまずいだろうに。
ユフィは初めての人間の友達で、とても大切だとは思う。
だけど命を呈してまで守りたいかと聞かれたら………、その沈黙が答えてある。人は誰しも自分の命が一番大切なのだ。それに死んでしまっては狼たちに助けてもらった恩をあだで返す様なもの。そんなことは出来ない。
「無理。嫌」
だから私は言葉を選ばず拒否の意思を示した。
ジークさんと私の間に奇妙な間が出来て、なんだか空気が重くなる。けどこればかりは譲れない。
だって私はこの森が好きなんだ。この森で、獣たちと一緒に切磋琢磨して10年も生き抜いてきた。今更人間の街に戻ったって私の居場所なんてあるわけがないし、作るつもりもない。
「………そう言うと思いました」
ジークさんはそう言うと背中に背負っていた大きなリュックをどさりと地面に置いた。
明らかに森を超えるだけじゃないその大荷物になんだか嫌な予感がひしひしとする。
「マヤ様、私はマヤ様を連れて帰るまで帰ってくるなと命令されております」
「は?」
「ですので、説得できるまでご一緒に住まわせて頂きます。どうぞご了承ください」
「は????」
はぁ?????!!!




