実は本物だったのだ
小テスト。これも学園生活の醍醐味と言える。流石に楽しみか-と言われると反応に困ってしまうが、これはこれで青春なのだ。
「よーし、お前ら配るぞー。私の授業を聞いていれば満点確実の内容だ。一人一枚受け取ったら後ろに回してくれ」
続々とプリントが配られる中、私も由来ちゃんから用紙を受け取る。
「はいマコ···ぃたッ」
「由来ちゃん!? どうしたの?」
「紙で指を切ったみたい」
「大丈夫!?」
「うん。この程度なら直ぐに治る」
「·········え?」
そう言いながら、由来ちゃんは切れた中指を見せてきた。というか、意外と傷が深い。本当に大丈夫なのだろうか-なんて思っていると、みるみるうちに傷は生き物のように修復していった。
「す、凄いね。こういうの自然治癒力って言うんだっけ? あはは······」
って人間の治癒力超えとるわ!!!
「ボクのは自然治癒力じゃなくて自己再生。指が飛んでも生えてくるよ」
「指が飛ぶ? は、生える?」
「そう。こんな感じ」
-ぐちゃっ! ぶシュッ!
「ぎぃやあああああ!?」
理解が及ばなかった。認めざるを得ない。どうやら彼女は本当に吸血鬼らしい。
そしてテストが開始された。いつにも増して真剣な様子の風亜ちゃん。やっぱりなんだかんだと言っても彼女は真面目な人なのだ。
なんて思ったのも束の間···。
「む。さっぱり分からぬ。やはり人間風情のテストなど、高貴な我にとっては逆に難題···ということか」
逆にって何。そりゃあ、いつも授業中に鎌をカチカチしてたら分からないでしょうよ。
「致し方あるまい。邪眼解放!!」
「漆、静かにせんか」
「はーい」
いきなり大声を上げた風亜ちゃんは天井を見つめながら物凄い速さで問題を解いていく。
「神通力!!」
「未華江もだ」
「申し訳ございません」
今度は何!?
風亜ちゃんに続き、瑠宇さんも大声を出す。何事かと思いきや、彼女もまた天井を見つめながら物凄い速さでペンを走らせていく。
右斜め前と左斜め前の二人が天井を見つめながら問題を解いていく。その光景はとてつもなくシュールだった。
テスト後、私は二人に邪眼だの神通力だのが何の意味を持つのか-それを問いかけた。すると二人は揃ってこう答えた。
「「透視能力だ!」ですわ」
······だそうだ。教室全体の光景を上から見るような感覚らしく、そこから最も正解に近い問いを拾い集めたらしい。
「······ってカンニングじゃないの!!」
「いやんっ」
「はぶっ!!」
私の手刀を喰らって涙目の風亜ちゃんと嬉しそうな瑠宇さん。聞くと、他にも好きな場所に瞬間移動したり天候を操作したり運を強制的に呼び込んだり-なんてことも出来るらしい。
今しがた、瞬間移動を見せて貰った私は彼女達をただの厨二病では無く、本物の悪魔と天使である事を理解してしまった。