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 いよいよ分岐点にさしかかり、右側を決断した。私が乗る電車の進行方向がこちらのホームなのだ。

 線路が盛り上がっていて陸橋になっている、その下を通り、道が左に曲がり、少し上り坂になっているのが見える。

 入って曲がると傾斜が陸橋よりも上になっているようだ、足に力を入れて坂を進むと……

 外れだ!駅のホームを見下ろすようになっていて、駅に通じていない。あのまま直進だったか。

(ホームに黄色い物が見えたが意識にはのぼっていない)

 疲れが溜まってきている足で、今度は下りになった坂を下り、二叉に戻る。時計を見ると、もう少しだけ時間がある、こっちの道は…さらに左に曲がっているのは見えていたが、そこまで来るとさらに大きく左曲している、駅から離れないかといぶかしむと、駅に入る道はあるのだが、道が曲がった理由の空間が、ここは採石場かというほど石がごろごろしていて、さらにショートカットできない。

 なんとか駅の入り口に通じている道に入り、息を切らしながらホームまで駆け込む。

 間に合った、まだ電車はまだ来ない。

 入ってすぐのホームを横切り、目的側のホームまでの道を歩いていると、黄色い帽子を被って幼稚園の制服なんだろう、着た女の子が私が乗る電車を待って、ベンチに座っているのが見えた。

 あー、そういえばさっき、黄色い物が目に入ったっけ、と納得するのだが、他には誰もいない、女の子の親も兄弟もいない、女の子は一人でベンチに座っているのだ。

 駅舎もない、駅の入り口を表示するものもない、数時間に一本しか電車が来ないこの駅で、こんな小さな女の子が一人だけ?

 変だな、とは思うのだが、疲れているし、さんさんと日が照る真っ昼間だし、女の子の姿がはっきり見えるしで、うぅん、まぁ、そんなこともあるのか?と、考えが崩れそうになりながらもそこに落ち着いた。


 電車が来た。一両だけのワンマンカーだ。

 乗り、運転手に料金を支払いながら、あの二叉に駅入り口の標識を付けてくれないかと言いたくて言いたくてたまらなかったが、おそらくもう二度とここには来ないだろうから我慢した。

 電車が動き出し、え?女の子は?と駅の方を見ると、女の子は反対側ホームに立っていた。

 え?

 私がホーム間を歩いたのは、ちゃんと両方にスロープが作ってあって、普通に移れるようになっていたけれど、女の子はその奥側、線路から高いままの方にいたのだが、一分もかからずあっちに移動したのか?

 自分の目を疑っていると、電車は一度大きく揺れ、バランスを崩した私は根性で踏みとどまった。そしてもう一度駅を見ると…女の子はこちら側ホームの、こちらの端に立っていて、こっちを見ていた。そして女の子の頭は黒くて、黄色い帽子が無くなっていた。

 電車はすぐにトンネルに入り駅は見えなくなり、私は空いている席を見つけて座った。

 リュックの中から本を出そうと開けると、そこに黄色い子供用の帽子が入っていた。

 私はその帽子を、網棚に置いていくか、持って帰るか、決めることができなかった。


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