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87.魔法使い
魔法使いが来て
助けてくれると思ってた
私だけの魔法使いが
苦しいと言えなくても
寂しいと言えなくても
魔法で全部治してくれて
頭を撫でてくれるの
眠れない時は側にいて
赤子のように優しくあやして
悲しい夜は抱きしめて
温もりを分けてくれるの
新月の夜空に
魔法使いを見つけた
でもその人は
沢山の人のための魔法使い
声が聞こえたら飛んでいき
身を削って魔法を使う
声を出すことを躊躇う私は
ただそれを見つめていた
私だけの魔法使いなんていない
そんなこと分かってはいたけれど
他の人に使う優しい魔法と
私に向けられる魔法
どちらも見えるから
とてもつらくて
魔法をかけてもらっても
すぐ悲しみに囚われる
私は
どうなりたいんだろうね