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79.忘却
消えていく思い出のひとひら
ああ また留められなかった
喜びも悲しみも
怒りも虚しさも
するりするりと解けて溶ける
砕けた思い出のカケラを集めて
必死に形を整える
それすらどんどん磨り減って
何にもなくなるのだけれど
空っぽの僕がいう言葉に
何の価値もないんだけれど
感じたはずの感情を
懸命に手繰り寄せたところで
何も出てこないという虚しさ
僕が消えていく
どうにか誤魔化してきたけれど
もう疲れてしまったから
僕が消えていく
記憶も感情もきっと
もう僕の中に留めてはおけないから
いつか
誰かを好きだという気持ちすら
忘れてしまうのかな