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14.「記憶」
僕の中には何も無い
幼い頃の記憶とか
誰かとどこかへ行ったとか
何にも思い出せないんだ
ふわふわ漂う何かの欠片
それはただの記録
人から聞いて補完した
辻褄合わせの欠片たち
楽しげに語らう誰かを見て
頭のメモに書き留めて
さも自らのものとして
振る舞う術を知っただけ
いつからこうなっちゃったんだろう
なんでこんなに空っぽなんだろう
確かに心は揺らいだはず
誰かと笑いあったはず
楽しいね、と微笑みあって
思い出を、作ったはずなのに
人の形の虚の中に
誰かの記憶を詰め込んで
そこに感情に似た何かを
ぺたりと貼り付け涙も添えて
ほら、
僕の出来上がり




