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1.秋
秋の夜長は人恋しくてだめだ
そうぼやいた君は、少しわらった
ふとその指先が伸べられて
すっとフレームアウトした
こんなにも君に触れたいのに
いつまでも声を聴きたいのに
温もりさえ届かないなんて
震える声でそう告げた君
同じように手を伸べる
画面に映る君の頬を
そっと、そっと撫でてみる
昔は電話さえ掛けられなかった、と
いつか親がぼやいていた
今は姿さえ簡単に見せあえるけど
声が聞けたら姿を見たくなる
姿をみたら温もりが欲しくなる
触れたら最後、手放せなくなる
欲は悲しいほど限りがなくて
あいたいよ、の一言が
どうしてこんなに
秋の夜長は人寂しくて嫌だ
月が穏やかに辺りを照らす
少しずつ君との距離を埋めていく
いつか君の元へたどり着けたなら
温もりを分け合おう