九話
てくてくと歩く三島の後ろをペタペタと歩いてついて行く。完璧なるストーカーである。それはいろんな意味も含まれているが。
理由としては、まずドッペルゲンガーについてのヒントを得るためだ。これは一つの仮説だが……昨日トイレから出てきた三島。あれがドッペルだと睨んでいる。ドッペルって便利だね。
俺の中には一つ自分の透明化についての説があり、それは同じ能力者(俺の透明化や溶解液男)ならば、俺の姿をとらえることができるのではないかというものだ。
溶解液男は、足跡でわかるとも言っていたが、ではなぜ校舎裏に入った時に男は俺の接近に気づくことができた?
都合のいい話だとは思うが、そんな気がする。
だとしたら、昨日蜘蛛を見て驚いていたあいつは……。
そんなことを考えているうちに、三島の自宅に着いた。どこにでもあるような二階建ての一軒家。三島が鞄から鍵を取り出して玄関の扉を開けた。俺はそれが閉まる前にギリギリすべりこむ形で家への侵入に成功する。
うわぁ。立派な犯罪者だぁ。
まあ、三島理恵に関わることということで勘弁してもらおう。うん。他人の家の不思議な香りがする!
一人暮らしではなく、両親と住んでいるらしい。玄関には父親のものと見られるゴルフバッグや、母親のものだと見られる靴。そして、折りたたまれた車椅子がある。だれか障害を持っている人がいるのだろうか。
理恵がリビングの方へ向かったのを見計らって、俺は二階へ。
なんとなくそっちに答えがあるような気がしたのだ。
そっと音を立てないように扉を押し開け、部屋を見渡す。
黄色を基調とした明るい部屋だ。右側には本棚があり、そこにはぎっしりと漫画本が並べられている。正方形に近い形をした部屋の右奥には勉強机が。その隣に窓を挟んでこれまた黄色のベッドが置かれている。
そこで、俺の目は止まった。
ベッドの毛布が、膨らんでいる。
「……ぬいぐるみでもあるのかね」
と、何気なく独り言を呟くと、かすかに膨らみが動いた。これは、間違いない。
俺は絨毯で足音を殺して、近づき――布団を剥ぎ取る。
「……うわあ、ほんとにドッペルだな」
「ひいぃ!」
情けない声を上げる、三島理恵のドッペルゲンガーを見つけた。




