七話
さてさて……。あの溶解液男との一戦から一週間がたった。
『三島理恵には気を付けろ』
とか言われたりしたが……。
平和!
超平和!
もはや困惑するし不安!
といった感じで今日もストーカー行為に励んでいるのは御年おそらく三十年の透明人間だ。まあ記憶がないから年齢は適当だが。もうちょいいってる気がする。
で、この一週間俺だって何もしていないわけじゃない。なんとか、頑張って三島理恵について知ろうと思ったのだ。
好きな食べ物はタピオカ。嫌いなものは蛙の卵。何がとは言わないがすごい。
好きな色は特になし。苦手な教科は家庭科。好きな教科は社会。うん。たぶん大人になったら自炊はできないけど敏腕なOLとかになる子だろう。たぶん。
まあそんな感じで適当にすごしていたわけだが……。
今のところ、異常はまったくない。三島にも、俺にも。俺には食事も排泄も必要が無いと気づいたぐらいだ。日常行為が不必要と言われると違和感がすごかったな。
それに、俺のような特殊能力者も現れず……。平和の一言しかでない。
そして今は昼休み。クラスの人々が俺がいるなどつゆ知らず。のんきに机をくっつけてはお弁当やら学食やらを広げて談笑に浸っている。
もちろん俺も三島の観察に精を出すわけだ。なんか意味深ですね。
そんなことはどうでもよく、三島はいつも一緒にいる女子二人と机をくっつけて弁当を出す。そのうちの一人、ポニーテールの少女が口を開く。
「そういえばさー、理恵、テスト大丈夫?」
「あれ? もうそんな時期だっけ?」
「うん。あと一週間」
「一週間?! あれー、おかしいな……。そんな話いつしてたっけ?」
んー? この前してた記憶が俺にもあるが、本当に覚えてないのか三島は首をかしげている。俺は覚えてるのにね。三島にしては珍しい。そこまでポンコツキャラではないというのに。
「一週間前。告られた時じゃない?」
「あ、あの時かー。うーん。同様してたのかな……」
「まあ、変な怪事件もあったんでしょ?」
「ああ、あれね」
派手な金髪の長髪の少女が、聞き捨てならないことを口にする。
怪事件……。
……あれだよな。
「急に壁が溶けたり、車が飛んでったりって、怖いよね」
「本当に怖かったよ、あれ……」
「でも、最近そんな話多いよ。ほら、これ」
金髪っ子がスマホの画面を二人に見せる。俺ももちろんのぞき見した。
「「ドッペルゲンガー……?」」
「うん。いるらしいよ。この近く。目撃情報もあるって!」
おいおい、そんな馬鹿な話があるか……。
「ええっ。でも、ドッペルゲンガーって偽物と本物が出会ったら……」
「そう、そこなのよ理恵。なんとこのドッペル死なないの!」
ドッペルと略すなドッペルと。しかし、これは……。
「怖いねー」
「でも面白そうじゃない?」
俺は内心にやりと笑った。




