十四話
おはようございます。今日も俺は元気です。
そうしみじみと実感するのは、穏やかに何も知らず友人と談笑している三島理恵を見ているとき。
やっぱいいよね。なんかよくわかんないけど、心地のいい背徳感っていいよね。中学生のころプールに転落して以来の高揚感だ。なぜそんなことを思い出したし。
そんなことはどうでもよく、こうしてまあストーカーをしているわけなんだが。
なぜか三島が背後を、俺のいるところを振り返った。
「どしたの?」
「んーん。なんでもない」
……先ほどから薄々気づいてはいたんだよ。
こいつ、偽理恵のほうだな。
「ちょっとトイレ行ってくるね」
「あー、うん。じゃあ先に理科室行くね」
そう言って、三島が一人女子トイレへ。俺もそれに続く。ここまで違和感無し。
「なんでそうも普通に女子トイレに入ってこれるんですかね……」
「ほらやっぱそうだった」
おっと、思わず口に出してしまった。
「まったく……。能力者になる前も犯罪者かなんかだったんじゃないですか?」
「まあそりゃ、確かに俺の能力死神だしな」
「記憶が無くてよかったですよ……」
うーむ。まあ無いから助かっているのだろうか? あったら今頃いろんなやつを殺していたかもしれないし……。
「そこは複雑だな」
「そうですか……。とりあえず、現在進行形で犯罪を犯しているのをどうにかしてください」
「ほーい」
「そこはすんなり引き下がるんですね……」
そりゃそうだ。
バレてる相手ストーカーしても楽しくないし。
……いかん。いよいよ末期かもしれん。溶解液男と同じ状況になってる気が……。
俺はうんうん唸りながら、女子トイレから出て、ついでに学校からも出た。少し興味が出たのだ。
……そういや、あいつがドッペルゲンガーしているときって、本体はどうなっているのだろうか。
俺は早速それを確かめることにした。好奇心には勝てないよね!
舞台は変わりまして三島理恵宅。
またやってきてしまった。さて、来たはいいもののどうやって確認するか……。なんか、子供がよくやるスパイごっこみたいだな。オラわくわくすっぞ!
まあ、持ち前の運動神経を活かして窓から覗けばいいだけなんですがね。
俺は前に偽理恵と飛び降りた、二階の三島理恵の部屋の窓めがけて跳躍。ついでに空中で一回転して窓の縁に足をかけた。
幸運なことにカーテンは閉まっていない。さて、どんなもんかな……。
だが、おかしなことにその部屋はなんの変哲もなく、外出中の女子高生の部屋そのままであった。
おかしいな。それでは、三島理恵の本体はどこに行ったのであろうか。
「そんなところで何をしているんだい?」
心臓が止まった。
いや、そう錯覚した。おかしい。俺は誰にも見えてないはず。見えていたとしてもそれは能力者だ。
俺はゆっくりと下を見る。そこにいたのは……。
「まったく。今日は柵の間でお昼寝かい?」
そう楽しげに笑う一人の女性。その目の前で気持ちよさそうに昼寝するネコ。
そう、三島理恵の母親だった。
俺はほっと胸をなでおろし。唐突にやってきた罪悪感によりタコ男の部屋へ帰ろうかと考えた。
「あと、そこの透明人間さんも」
その考えは一瞬で吹き飛んだ。
三島理恵の母親は、目を瞑っていて、手には杖を持っている。歩く時には、足の少し先に杖を出して障害物が無いかどうかをしっかり確認していた。
盲目の能力者。
「……ど、どうも」
「安心しなさい。通報はしないわ。見えないし、見てないもの」
そう言って、くすりと笑った。




