木が豆粒のようだ。
前回の投稿の日付って…いつだっけ…
じゅ、十二月九日ね!
まだセーフ! セーフだった!(アウトです)
今、私は森の上を飛んでいる。
木が豆粒のようだ。
…嘘だよ。今、マンションの十階程度の高度しか出してないよ。
幼い頃から、ずっとこうして鳥みたいに飛んでみたかった。
お母さんには「そんなに飛びたいならパイロットになりなさい」とか言われたけど、そうじゃないの!
こう、生身で飛んでみたいの!
凄く説明したけど伝わらなかった。
語彙力が来い。
でもまあ、こうして飛んでると風が体に当たるわけで。
あー、風が気持ちいい…。
柔らかな風が肌を撫で…撫で……
さっむい!!!
寒い! スピード出しすぎた! あと高度も地面より割と高いからか尋常じゃなく寒い!
風なんて柔らかくないよぉ!
めっちゃ肌に突き刺さる! 痛い!
穏やかになんて楽しめないよぉ…ううう。
「へっくし! っくしゅん!」
くしゃみも止まらないし鼻水も出て来たし…付与、『暖』!
ううう、あ、暖かくなってきた。
あー、快適快適。
「っくしゅん!」
くしゃみはなぜか止まらないけどな。
まあいい、今は飛行を楽しもうじゃないか!
ぐるーん、と大きくカーブする。
こんな感じで飛行が楽しみたかったんだよ。
今、拠点を中心に円を描くように飛行しているわけだが。町、見えないかなー。
ん?
ギャース!
目が、目がアアアア。
な、なんか反射して…眩しい。
何だ?
向こうの山脈の麓に、何かある…?
よし、行ってみよう。
もしかしたら町かもしれないからね!
んー?やっぱ、何かあるな。
白、町?
町だああああ!!
最高速度でひとっ飛びだぜ!
うりいいいいいい!!
「っくしゅん!!」
ぎゃあああああ速度出しすぎたアアアア!!!
え、今何かあったようなってああああ止まらないいいいい!
はー、はー…やっと止まり方思い出した。
焦りすぎて止まり方とか全部吹っ飛んだ。
いや、ただ単に『ストップ』って念じるだけなんだけどね、悲鳴しかあげて無かったから。
鼻水が止まらない。
あと震えも止まらない。
か、風邪ひいたかな(涙目)
あったかかったんですけどねー。
おかしいな。
とりあえず、町にはついたし…次は、町の調査だね。
え? 町を見るだけじゃなかったのかって?
……異世界の町を目の前にして我慢が出来るとでも?
私はできない。
できません(断言)
んー、それでは、じゃーん。新作カード、『ステルス』発動!
では、堂々と町の中に入ろうか。
不法侵入?
私この世界の人間じゃないですしおすし。
ばれなきゃ問題ない。
……仕方ないじゃん、異世界モノとかでよくある、町入るときに必要なお金とか全然ないんだよ!?
村か! 村で交換しろってか!
そういや何かあったような…ハッ!
あれが村…?
あ れ か よ !
だとしてもどうやってお金を手に…あ。
猪…あれ使えるんじゃない?
あれ、毛皮とか肉とか売れるかも。
保存状態は良いほうがいいから、早めに村に行って売ろうっと。
まあ今回は町の調査なんですけどねー。
えーと、今は太陽が…こっちだから…西の方向に町があって、東のほうに拠点、と。
太陽の位置からして夕方になるまでにはもう少し時間がありそうだな。
時間の差があるかもしれないことも考慮に入れると、もう少し早めに帰りたい。
つまり、調査時間は一時間ってところだな。
さーて、ステルスはしたね、おっけーいっくよー。
衛兵(仮)さん達がいる場所をそっと通り抜ける。
両脇挟まれてるし、槍持ってるし威圧感でつぶれそうだ。
入るけど。
ばれないよね?
お、おっと…危ない、人にぶつかりそうになった。
おっちゃん髪の色青ってどうなん?
この装備、冒険者っぽいなー。
…ステルス、大丈夫だよね?
透明化、防音、防臭、気配消とかなんか色々。
明らかに見た目からして冒険者って感じなんですがー。
町に入るっぽいからちょっと見せてもらおうっと。
……うぇ、スルー??
と思いきや、なんか見せたな。なんだこれ。
身分証…?
冒険者ギルドでもらう異世界お決まりのギルドカードと見た。
……顔立ち、彫深いなー。
これは…日本人基準で童顔(実年齢15、外見12くらい。場合によっては10)の私は、どう見ても外国では10くらいに見えるはず!
で、そのくらいの子が「まちにいれてよぉ~」と大泣き…。
うん、ワンチャン入れてもらえるかもしれん。
あ、おっちゃんバイバイ。
よーし、今度こそ街に入ろう。
町の規模は結構小さいなー。
まあ見渡す限りの建造物と山と海っていう日本出身だからこその感想ですけど。
いや、うん。日本の町、上空から見たことなんてないし。
飛行機は別だよ…雲の上だからねー。
小さすぎて見えないし、境目なんてわかんないよ。
と、まあそんなことはどうでもいいんだ。
門を入ってすぐに、大通りが見える。
いくらステルスモードでも路地裏とか、ろくなイベントおきなそうだし…行きたくないんだよね。
…恭子たちには絶対に路地裏入らないように言っておこう。
路地裏イベントが起きそうなのは恭子と美優…姫香はあまりなさそうだな…いや、主人公の友人ポジとなるならばあり得るかもしれない。メモメモ。
一応全員に気をつけてもらわないと…それと、私は最初に襲われて事件が始まるようなモブだから、絶対に入らないよ?
そういう事件はほんといらないから。
やるなら主人公たちだけで勝手にやってもらいたい。
私は冒険系ゲームの宿屋のお姉さん的存在になるんだっ!
勢いで宣言しては見たが、意外といいかもしれない。
要検討っと。
では、大通りの露店を眺めて、通貨を調べるとしよう。
ちょうど良く、お話している人たちが…。
緑色の髪って、奇抜だな。
通りにも異世界らしく奇抜な髪形の人がよく歩いている。
異世界モノ定番の、エルフや獣人と言った種族はみかけない。
うぬぬ。
かわいい女の子キャラ(エルフとか獣人とか貴族とか)は出てこないのか?
そういや、森の中で悲鳴が聞こえて云々ってイベントなかったな。
あれか?主人公格全部女だからか?
いやあああ!男しか出てこないの!?
出てくるイケメン全員二次元行けよおおお!
三次元に興味はない(キリッ)
「全部で120リルだ」
「はーい。うーんと…」
「嬢ちゃんお使いかい?」
「うん!」
「そうかぁ、ならこいつをおまけしてやろう」
「やったぁ!ありがとう!」
「はい、まいどありー」
ほうほう…銅貨っぽいものを持ってるな。
穴のない銅貨が三枚、穴あき銅貨が二枚。
ほうほうなるほどねー。
穴あき銅貨が10リル、普通の銅貨が100リルと…。
となると、もちろんそれ以上の価値のある銀貨や、金貨、あるいはそれ以下の価値の貨幣がありそうだ。
これもメモ帳にメモしておこうっと。
あっとはー…冒険者ギルドの場所も調べておきたいよね。
多分、ここらへんで一番立派な建物だろう!
と、なるとあれっぽいよね。
…多分、あの塀に囲まれた豪華な建物は違うよね。
お貴族様とかがいるところだよきっと。
あそこには近づかないように気をつけながら、あのひときわ高い建物に行ってみよう。
あ、ついでにどんな建物があるのか調べながら行こうっと。
冒険者ギルドに到着いたしました。
この感じ…やはり、私の睨みは正しかった!
これこそが冒険者が集いしギルドだ! めっちゃ緊張する!
ひええすっごい威嚇されてる気分!
な、中に入るのはまた今度にしようかなー(目逸らし)。
上を見上げると、空から降りてくるときには気づかなかったとある文字が目に入る。
………読めない!
そういえば、先ほどの露店での会話。
あれ日本語だったな。
なるほど、自動翻訳もついてるんだね。
翻訳というか、吹き替えか。
異世界モノの「日本語ではないけれど、理解が出来る」というわけではないし。
ありがたいわー。
文字は読めないけど。
あれ、そうしたら私、異世界語喋れない可能性あり?
ええええ困るよ!付与でなんとかできるかな?
まあとりあえずは話してみないとわかんないよねー。
要検証…っと。
さてギルドを調べるか。
ギルドの扉は半開き。このくらいの隙間ならすり抜けられそうだ。
ゆっくり、ゆっくり…慎重に。
ドア動かして怪しまれるのもいやだからね。
冒険者ってかなり気配とかに敏感そうだから、見つかったら殺されそうだ…。
かなりガクブルしながら中に入る。
いざとなったら最高速度で扉吹き飛ばして脱出しよう。
中は、うわこりゃまたテンプレな。
受付らしき明るい場所と、酒場らしき暗めの場所がある。
受付の横には何か文字が刻まれた金属製の板が壁にかかっている。
おそらく、ギルドで受付令嬢がよく口頭で説明してくれるような事が書いてあるんだろう。
それか創立に関する事とか。
んー、読めないのは不便だな。
でもどうせ登録した時に説明され…。
気になる……。
ええい『異世界語変換』!
…長い!
わかってたけど長いな、というかこれ日本みたいに表意文字使ってる?それとも英語みたいに表音文字だけ?
んー、気になる。
いいや、今はとりあえずあらかたメモしておこう。
よーし、終わった。
ところどころよく意味のわからない文章もあったけど、詳しくは受付嬢さんが説明してくれるんだろう。
それじゃそろそろ帰るか、もう結構時間経ってるだろうし。
えっと…確か、太陽が沈んでる方向とは逆方向に帰ればいいんだよね!
なんか疲れたし早く帰ろう。
まあほとんど何もしてないけど、異世界の町に行くっていう超重大イベントをこなしたからね。会話してないけど。最初から最後までステルスだったけど。
「ただいまー」
「あら、遅かったわね」
「調査してきたよ、っくしゅん!」
「大丈夫?」
「へっくしょい! …なーんか、くしゃみが止まらないなぁ。はい、これ調査メモ。今日は早く帰って寝るよ…」
「そうしなさい。美優、姫香ー!」
「「はーい」」
「日和が調査…調査? 貴方、見に行くだけとか言って…」
「あー! くしゃみが止まらないから先に帰るねばいばーい!!」
「……はぁ…」
《日和の調査メモ(ところどころにイラストや新作小説などのアイディアが書きこまれている)》
・方向
西
・町の門
門番が二人立っている
槍所持
甲冑装備→機動低そう
門に入るときにはお金が必要?
(門番のイラスト)
・通貨
単位はリル
穴あき→10
普通→100
村で猪を交換→お金を手に入れる
(通貨のイラスト)
・建物
テンプレ異世界町、ただしエルフ、獣人などは見かけない。ギルド、冒険者の存在を確認。貧民街を確認。教会を確認。貴族の城を確認。
(建物のイラスト)
・ギルドのランク制度
ランクは上からSABCDEF
S→超一流、国からの依頼も受注可
A→一流、信用あり、紹介可
B→腕の良い中堅、単独依頼受注可
C→中堅、護衛依頼受注可
D→初心者卒業、討伐依頼受注可
E→初心者、採取依頼受注可
F→お手伝い、町内依頼のみ
ランクは基本、討伐、採取、クエスト達成などでたまるポイントが一定数溜まると上がる
(びっしりと白髪赤目に死んだ目のSランク冒険者を主人公にした物語の設定が書きこまれている…)
「っくしゅん」
気持ち悪い…風邪をひいたようです。
実はあれ、『暖』は周りがあったかくなったんじゃなくて、体に暖かいんだと錯覚させていたっぽいんだよね。
イメージで何でも出来る弊害がここに。
見事に風邪をひきました…つらい。
異世界? 行けないよ…ははは。待ち合わせしてたんだけどね。
ところで、異世界とこちらでは進む時間が違うようで…異世界で数時間過ごしても、こちらの世界では十数分だった。
…これは、お泊まりできるな。
そして不思議なことに、異世界を留守にしている間は時間が余り進まないらしい。これは、残った三人が検証した結果だ。
ご都合主義万歳。
異世界に泊まってみたいなー。折角拠点あるんだし。
まあ全部、風邪が治ってからの話だけど。
「ごほっ…げほげほっ」