私はモブである。名前は日和。
新シリーズ投稿開始になります、エタらないように余裕を持って投稿していきたいです。
…おうふ。こいつは驚きだ!
なんでやねん。なんで私。
私選ばれし勇者ちゃうねん。
ただのモブだ!
あ、モブか。モブだからか。都合の良い犠牲役か。
でもこの状況だと名無しって訳にはいかないだろうし脇役か?
いるよなー、脇役で序盤で死ぬ奴。
それにしてもヤバいな。
何がヤバいって、兎に角ヤバいんだよ!
あ、ありのまま今起こったことを話すぜ! 親友三人とカラオケに行って歌ってたら、一瞬で森の中にいた! な、何を言っているかわからねーと思うが以下略。
こりゃ、転移系か、召喚系か…オタクの血が疼きま、すん。
ブリッジしたぁい(錯乱)。
はぁ……失礼。少々混乱してまして、思考が支立滅裂に…。大変理解しづらく申し訳ありません。
ハッ、誰に謝ってるんだ私。画面の向こうの世界か? いやいやいや、主人公でもないのに話しかけても描写されないじゃん。なにやってんだ私。
「でも巻き込みすんなよー。私モブなんだからすぐ死にそうだし。」
「それはない。」
「ないです。」
「むしろ一人最後まで生き残りそう。」
いやー、やっぱり、主人公になれそうな奴等の言うことは違うな。
めっちゃ謙遜してるし。
ただのモブを友人にするとか、すげーわ。さす主。
あ、だから主人公なのか納得っす。
一人うんうん、と頷いていると冷たい目線を向けられた。何故だ。
「というか、巻き込み?ってどういう事?」
「さあ?どうせまたオタク関連でしょ。」
「…転移か召喚か。転生はないですね…」
うーむ。
これが異世界冒険譚的な物だとして、主人公は誰になるんだろうか。
分かった、自然に逆ハー作り上げてる奴だ!
でも逆ハー的展開はこのメンバーだけじゃできないな。展開するためには外部からイケメンを仕入れてくる必要がある。
町か。町に行けばいるのか。
主人公に親切なイケメンまたは美少女がっ!
なろう小説では大体ハーレム、逆ハー要素があるからね。そういうの是非見てみたい。私は悪いが二次元にしか興味ないんでパスするけど。
あ、そもそもこんなモブにイケメンが惚れるはずがなかった。
選ぶのは私じゃなくてイケメンだった。
モブの分際で調子こいて申し訳ありませんでした。
それにしても今の状況じゃ、判別しにくいかぁ…。
誰か主人公かによってバイオレンス度が違いそうだから早く判別したいんだけど。
まず、白石姫香の場合。
かなり金持ちの会社の令嬢。でもお嬢様学校には通わない。美人だし、口調は丁寧で、優しい性格だがオタク。どうしようもないオタク。逆ハーになりそう。一番平和そうな主人公。
次、萩原美優。
運動神経抜群。うじうじ考えるより、直感で物事を決める脳筋タイプ。勘が鋭いので物事の本質を見抜くことも出来る。美優が主人公なら戦闘系無双になりそう。
最後に、篠崎恭子。
他の人の前ではゆるふわ天然ガールを装っているが、彼女の本質は冷徹。二面性を持つ恭子はとてもキャラが濃い。主人公なら復讐系成り上がりか、王道系成り上がりか。
復讐系はほんとバイオレンスだから止めた方が良いと思う。
実際に体験するなら無双かほのぼの! そして私は安全地帯!
死ぬ未来しかみえましぇん…だれか…たすけて…。
まあ何はともあれとりあえず町に行こうぜー。主人公についていったら何とかなるさ。
何故なら主人公にはご都合主義というモノが存在するからな!
現実的に考えると、こんな森の中で町が近くに無さそうなときは主人公って存在に縋っても良いんじゃないだろうか。
そもそもスタート地点が森な時点でハードモードすぎるし。異世界の森には魔物がいる。これ、ラノベ的展開の常識。
それにしても、さっきからやけに静かだね。
嵐の前の静けさ…なんちゃって。
あれ、今フラグ立った?
い、いや言葉にしてないからセーフなはず。モブの思考だし。セーフセーフ。
げ、現実逃避やめよう。そうしよう。
脳内で考えを纏めていると、三人の話はサバイバルをしようという方針に固まったらしい。
うん、サバイバルに詳しい人がいるなら良いんじゃないかな。
「サバイバル術に詳しい人居る?」
「申し訳ありませんが、テレビで見た程度しか無いですわ。」
「キャンプの知識ならあるぞ!」
「……日和!」
うぇっ、私?
これはまさかチュートリアル的なモノを求められているのか?
とりあえず、サバイバル術は火起こしと魚の捌き方しかしらんぞ。サバイバルではないが、魚の集め方も一応。
「火起こし、魚の捌き方なら。でも、火起こしするのは火種が必要だよ?」
「火種?」
「ほら、キャンプとかで板と棒こすり合わせてやってる奴。あんなモノ無いし、魔法が使えない限り火をおこすのは難しいんじゃ…あっ。」
「他にも方法はないんですの?」
虫眼鏡とかのレンズがあれば、行けるかも。小学生の時虫眼鏡使って紙燃やしたなー。レンズは小さいし、ちょっと曇ってて中々火が付かないしで結構大変だった。
懐かしい。
「レンズ持ってる?あれなら光を一点集中させて、火を付けられるかも。」
「レンズ…」
「レンズなんて無い!」
「ないですわね」
「じゃ、無理!」
キッパリと無理と告げる。知識はあっても行動できなきゃ意味が無いんだよね。
火の付け方は調べた事あるんだけど、やっぱり火を付けるための道具が無きゃ素人には難しすぎる。
せめてナイフっぽいモノがあったら削れるかもしれないんだけど。
火はどうやら確保できないらしい。
人間に必要なのは水。栄養。睡眠。サバイバルでこれは抑えておきたい。
睡眠は後で考えるとして、水と栄養は川と果物でいけるかな?不安なんだが。
「あー、帰りたいですわ…」
あ、わかる。超分かる。
カラオケしてたら突然サバイバル展開になるとか、誰も予想できないよねー。
むしろ予想できる奴がいたらすごい。どれだけ勘が良いの。まさか…未来予知!?未来予知が出来たら良いな。
姫香の方を見ると、どうやら目を伏せているようだ。
異常事態に疲れているのだろうか。疲労回復系のアイテムをお持ちのお客様はいらっしゃいませんでしょうか。
不意に、姫香の姿がかき消える。
えっ。
ええええええ!?
なんで消えるの!?
て、敵襲!?体がないから、それは考えにくいけど。
ホームズさん、出番です。
「ふむ。彼女は目を伏せていたようだ。直前の発言から、思い浮かべていたのはカラオケルーム?家?彼女に縁深い場所だろう。」
「何かよく分からないけど、さっきみたいに移動したってこと?」
「ワトソン君。君、目を閉じてカラオケルームのことを思い浮かべてくれ」
「ワトソンて、助手扱いか。はいはい、分かりましたよ。」
同じように目を閉じさせてカラオケルームのことを考えてもらう。多分、これで良いと思うのだが。
案の定、美優の姿もかき消え残るは二人。
よし、ここはモブとして主要人物を先に行かせるべきではなかろうか。
本音を言うと先に帰って何かあったら嫌だし私が残る。
「俺のことは良いから、先に行けーっ!」
「…何言ってんの?」
ちぇー。姫香ならノってくれるのに。
渾身の死亡フラグ建設も冷徹には効かなかった。恭子っょぃ。
とりあえず、先に行ってもらおう。
ほらほら、森にずっといると危ないよ。
早くお家に帰りなよ。
「分かったから貴方も早く来てね。」
で、デレキターーーーーー!
珍しすぎるデレですよ!これが主人公格のデレの破壊力か!
ただし美人に限る。これ重要。
普段デレない人がデレる…そこには萌えと萌えと萌えと萌えが詰まっている。
ただし美人に限る。大事なことなので二回言いました。
「大丈夫だ、問題ない。」
ドヤ顔をしたのだがため息をつかれた。
えー、何で?
「…貴方、ドヤ顔してるつもりかもしれないけど表情変わってないわよ。」
「えっ!?」
そんなに表情筋死んでた?
心当たりないなー。
最近笑う機会が少ないせいかな?
ぐにぐに自分の頬を動かしていると、ふっと笑って恭子が消えた。
くそう美人め綺麗すぎるぜ。
これだから美人は!美人は!
大好きですありがとうございます。
私、推しキャラは全員美人だよ。性別関係なく美人は推しだよ。
というか、男の方が多い気がするけど。
あ、あれだ。怜悧な風貌の美人が好きなんだ。
そういう奴等は大概ドS。
別に私が被虐趣味な訳ではない。偶々だ。
そういう人が動揺してたりするとめっちゃ萌…げふんげふん。
そ、そろそろ戻らなきゃ。
目をつぶってー、カラオケルーム念じてー。
お?
光の角度が変わったぞ?
目を開けると、既にカラオケルームだった。
先程まで森に行ってたのが信じられないくらいだね!
「とりあえず、曲入れよう。」
「森については考えないの?」
「帰還方法はわかったし、も一度行くなら行ったときに考える。情報少なすぎて分からん。超常現象ってとこか。でも正直、モブにゃ関係ないしそういうのは主人公がやるべきじゃないのかい?」
「「「………」」」
またもやなんとも言えない視線を感じたが、気にせず曲を入れた。
誰が何と言おうと、私はモブである。
それに揺らぎはない。
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さて、あの不思議な森の一件から一週間経った。
現在私は、部屋にて本を読みながらぐーたらしている。
今日の分の勉強もう終わったもーん。
これで心ゆくまでぐーたらできる!
というわけで、ラノベを読みあさっていた。
ラノベマジ最高。
もう、ラノベがなかった時にどうやって生きてたのかわからない。
でも最近本棚が狭くなってきたなー。
本が多すぎて置き場所に困る。
主にラノベとかラノベとかラノベとか。
それはそうとして暇だな。
なんか、刺激的なことないかな?
一瞬、そんなことを考えたのが悪かったのか。
私はまたもや、森に投げ出されていた。
天丼は勘弁してくれ。
手に持った本を抱えながら、周りを確認。
どうやらこの間来た場所のようだ。
いや、木ばかりでなんもわかんないけどさ。
ちぇ、今度は町に下ろしてもらいたかったんだけど。
しかも、今回一人だけって…なんでモブを選んだ。選ぶなら主人公かヒロインだろ。
でもどうせ一人なら、魔法使おうとして失敗してもバレないよね。
くっくっくっ…!
よし、魔法の練習しよう!
魔法かー、魔法と言えば某魔法学校のあれだよね。
「よーし、アグアメンティ!」
ギャオス。
ほんとに水が出た!めっちゃひょろひょろだけど出た!
水は空中から絞り出されているように見える。
え、これ幻?
触ってみると確かに実体がある。
夢かな?
夢にまで見た魔法が使えるようになってるとか、これは夢か。
そうだこれはきっと夢なんだ。
でもこんなひょろひょろって、もしや私魔法の才能ないかも?
い、いや、使えてるってことはあるんだよ。信じてる。
あー、そういやこの水どうやって止めんの。
あんまりやり過ぎると、魔力枯渇になりそうなんだけど。
もう既に大分体調悪いんだけど。
夢なら体調悪くすんの止めろよ…あ、止まった。
あと水だけじゃなくて現実逃避も止めよう。
現実を見据えよう。
魔法が使えたことで、ここが地球でないことが確定しました。わーぱちぱち。
……え、じゃあここどこ。
異世界なの?モノホンの?
わーお。
マジのラノベかよ。
あれ、私やばくない?
こういう話とかって、モブとか脇役は死ぬよね。
話にもよるけど、ダークなやつはほんとすぐ死ぬ。
敵が強い!強すぎるんだよ!
でも私は死にたくないんだよなー。
モブだけど。
主人公のために身代わり?
無理に決まってる。
私は我が身が一番かわいい。
死にたくないのは本能だもの。
じゃあ、死なないためにどうするか。
強くなりますか?
Yes / No
………まあ、いつかね!秘技、後回し。
とりあえず、今日から筋トレしよう。
モブはモブなりに頑張るよー。
じゃあ、もうそろそろ帰ろうかな。
実は、家から来ちゃったから靴はいてないんだよねー。
しかも、私家じゃ靴下はかない人なんだよね。
何が言いたいかというと、今裸足なんだよ。
足からモロに土の感触がしてきて結構気持ち悪い。
は、早く帰ろう…あ、できれば風呂場に直接帰りたい。
目を閉じて帰ろうとしたら、何か軽いものが落ちる音がした。
目を開けて確認したら、目の前に紙が落ちている。
待て待て待て。どっから出てきたお前。
まわりに誰もいないのに、お前どっから出てきたんだよ。
ま、まさかこれが異世界の力だというのか!?
こういうイベントはモブじゃなくて主人公にやったらどうなんだ。
全力で関わりたくないんだけど。
厄介事に巻き込むなよ。
良いか、主人公が厄介事に巻き込まれて生きていられるのは、主人公が主人公だからで、天運を味方につけてるから生き残れるの!
ただのモブは運もないしスペック的にも主人公に劣るから生き残れないの!
わかる!?
というか、何この紙。
コピー用紙?
なんか名簿っぽいのが書かれてるしほんとなんだこれ。
名前 能力
河原日和 事象付与
篠崎恭子 怪力 魔法無効
白石姫香 確定命中 空間収納
萩原美優 生成 邪眼
ちょっと待て。色々待て。
事象付与ってなんだよ。
他の、スキル?はこう想像つくよ?
邪眼とか変なのも交じってるけど、まあ想像つくよ?
事象付与ってなんだよお前。
説明書、説明書はないのか!?
チュートリアルはどこだ!
ぜーはー、ぜーはー。
まあ、無いもんはしょうがないよね。
事象付与。事象、付与。
字面通りにとらえれば、物事を付与する?
わ、わけわからん。
あれ、これまさか、自分の思い通りに動かせるってやつですか?
なにそれチート。
だが、えてしてこういう能力は制限が多いか、なんらかの副作用がある場合が多い。
あ、まさかさっきの奴…魔法だと思ってたけど、実はこの能力?
使うたびに体調不良になるとかすごく辛いんですけど。
……あ、体調不良が回復するような付与をすればいいのか?
それでまた体調不良に陥ってちゃ意味ないか。
ふーむ…回復魔法を何とかして習得する…は無理だろうし、なんとかして付与を永続的に使える回復アイテム的なものを作成した方がいいかな。
今回は諦めるか。
よし、かーえろ。
結局この紙何なんだ?