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旅立ち

アイビー王国―ここは人口2000万人からなる国家。そこには、精霊使い《スピリットマスター》と呼ばれる者達がいた。


彼らは精霊と契約を結び、その力を自在に操ることで生業としてきた。


精霊使い《スピリットマスター》は様々なギルドに属し、活動を行う。


そして、そのギルドの中で一際、大きな輝きを放つギルドがあった。


その名はエンジェルロード。


♢♢ ♢ ♢♢ ♢ ♢♢ ♢♢ ♢





「ふぅ、今回の旅も疲れたなぁ」

少年、シャイン=エンジェルがぼやいた。

金髪に碧眼、中性的な面持ちである。

年齢は16歳。体型はやや筋肉質である。

この少年、遥々、遠方の地へ赴き、クエストをクリアして来たばかりであった。

やっと帰って来たとシャインは思った。

アイビー王国にある街―フリージア。

中世ヨーロッパ風の街並み。

街には様々な商人がおり、小型サイズの恐竜が馬車引きをしたりしていた。

ここにはシャインの属するギルド―エンジェルロードがある。

ギルド―エンジェルロードという名前の由来は、初代のギルドマスターが天使の力を宿していたとかなんとか……

(そろそろか……)

しばし、歩を進めると、シャインの視界に大きな建物―ギルドが映った。

「やっと着いたな」

シャインは安堵し、そのままギルドの門を勢いよく開けた。

ギルドの中は人でごった返している。

その中には様々な人がいた。

商人や役人、クエストの依頼者といった外部の者達。そして、このギルドに属し、依頼を請け負うことで生業とする内部の者達といったところであろうか。

この町で人気を博しているギルドだけあって、依頼者の数、依頼の質は多岐に渡っている。

依頼者は財閥の御曹司やらの富豪、時には国を動かす権力者から、民間人まで。

依頼難易度はSランクからEランクまであり、依頼は自分から受注するか、若しくはギルドマスターの決定に基づき、構成員に割り振られる。

「相変わらず、賑やかだなぁ」

シャインは思った。

やはり、我が家は良いものだ。

慣れ親しんだ雰囲気は自分の居場所を再確認させてくれる。

「おう、シャイン!帰って来たのか?」

しばし、感傷に浸っていると酔っぱらった青年が話しかけて来た。

「ゲッ、グレイズ……」

シャインは苦虫を噛み潰したような顔をした。

グレイズと呼ばれるこの男、茶髪にあご髭をたくわえ、飄々とした雰囲気を醸し出していた。

「シャイン、おめえ、また大仕事を成し遂げたらしいじゃねえか。なんでも今回は盗賊の親玉をぶっ飛ばしちまったとか」

「まぁな。かなりしんどかったが、俺の敵じゃねえよ」

「へっ、言うじゃねえか。巨人の盗賊団ジャイアントキリングと言えば、ランクBに属する大物盗賊団だ。そいつをノシちまうとは恐れいったよ」

「そういうお前はどうなんだ?相変わらず、酒飲んでるだけか?」

「バッ、バカやろっ!俺だってたまには仕事くらいするってんだよ!」

「どうだかな〜。お前、今、120連休って聞いたぞ」

シャインはグレイズを軽くからかってみせた。

「テッ、テメエ!」

顔を真っ赤にしグレイズが身を乗り出すと、そこへ一人の少女が駆け寄って来た。

「シャイン!あんた、帰って来てたの?」

この少女、名をアリスと言う。

青い髪にツインテール。

白と青に彩られたスカートを身にまとっている。

年端16歳の可愛らしい少女。

「おう、アリス!つい今な!」

シャインが返事をすると、アリスはシャインの隣にいる青年―グレイズに気づいた。

「あっ!グレイズ。久しぶり!」

「おう!アリスちゃん!こんにちわ〜」

さりげなく挨拶を交わす。

「ちょうど良かった!二人とも、次のクエスト、一緒にやらない?良いやつ見つけたんだ!」

「アリスちゃんの誘いなら、断れないな!」

グッと親指を立て、グレイズが了承した。

「まぁ、俺も良いけど、出発はいつなんだ?」

「明日よ!」

シャインの問いにアリスがキッパリと答えた。

「明日⁈」

急な申し出にシャインとグレイズが同時に驚く。

「俺、今、帰って来たばっかなんだけど……」

つい今しがた、屈強なる盗賊を撃破して帰って来たばかりである。

「俺も明日はチャンネェとの予約束が……」

グレイズも弱音を吐く。

「とにかく明日!いい?明日の朝、7時にギルドの前集合という事で!」

二人の事情など意にも介さぬ強行採決である。

「は、はい……」

勢いに押される形で二人とも了承した。

女の子には弱い二人であった。

♢♢♢ ♢♢♢ ♢♢♢ ♢♢♢




翌朝、シャインはギルドの前にいち早く到着していた。

(疲れが取れん……)

シャインが肩をコリコリさせていると、そこへグレイズが現れた。

「う〜すっ」

こちらも、気だるそうな雰囲気だ。

「おう。来たか」

「嬢ちゃんは?」

「知らん」

「たくっ!何だってこんな朝っぱらから。おい、シャイン。足引っ張んなよ」

「こっちのセリフだって〜の」

二人が相変わらず罵り合っていると……

「おっはよー‼︎」

ハイテンションのアリスが駆け寄って来た。

「おう」

「おはよう!アリスちゃん‼︎」

アリスの天真爛漫な笑顔により、一気に場が明るくなる。

そしてグレイズの変わり身の早さは、さながらシャッターを下ろした直後にスイッチが入る一流俳優の如きものであった。

「さあ!皆!早速、クエストに出発〜‼︎」

拳を天にかざし、アリスが声を張り上げた。


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