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現代社会に冒険者という職業が出来るそうですよ?  作者: Motoki
第一章 迷宮出現・攻略 〜地球〜
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No.13 先輩、戦闘訓練

 月曜。それは1週間の始まる日。

 その日がどうしても憂鬱に感じるのは冒険者になっても同じようだ。


 俺は端末で冒険者に関するニュースを見ながら、朝食を食べていた。


『25層守護者に冒険者またも壊滅』


 25層のガーディアンってそんなに強いのか。

 今回は攻略隊(国が迷宮攻略の為に作った特殊部隊)が新しく作られた迷宮攻略用の武器を持っていったと聞いたんだが。


 俺は気になったので詳細を確認する。


『攻略隊と最前線で戦う冒険者達の混合部隊、60人が25層の守護者に挑んだ。結果は全員が死亡。迷宮攻略の戦力を大幅に失う事となった。』


 60人で行って壊滅したのか!

 どんだけ強いんだよ。


『攻略隊は魔力の弾丸を撃ち出す銃を開発し今回の守護者戦に使用したが、人数が多すぎたせいで逆に役に立たなかった様だ。前衛をしていた冒険者曰く、「後ろから撃たれる弾丸を気にしていて集中出来なかった」と。今回守護者に挑んだ攻略隊は総勢45人。その全員が魔力銃を装備していた為、前衛は後ろから迫る弾幕を常に意識せざるを得なかったという。』


 前衛は後ろが気になって集中出来ず、後衛は前衛が邪魔で撃てなかったのか。

 ニュースの続きにはさらにこう書いてあった。


『魔力銃の威力もそれほど高くなく、剣での通常攻撃の方が威力は上だったらしい』


 なるほど、それじゃあ今回は完全に攻略隊が足を引っ張ったな。

 この結果を見るに、守護者戦のリーダーは撤退の判断も出来ない人間だったのだろう。

 部下が少し可哀想だ。



 __ピンポーン


 チャイムがなった。勇気と剣心が迎えに来てくれたのだろう。


 朝の諸々の準備を終えた俺はカバンを持って部屋を出た。


 ◇


 校門に着くと、何やら騒がしかった。

 見ると、剣と盾が描かれたエンブレムを胸に付けた3年生がいた。


 「おおっ!あれは学校最強の血盟、《陽光騎士団》の血盟主だ!」

 「私初めて見たわ!」


 とわかりやすく周囲の生徒が騒いでいる(説明してくれる)

 《陽光騎士団》とは現在校内で1番強いとされている血盟だ。もっとも校内で確認されている血盟はまだ4つだが。


 《陽光騎士団》には3年生の半数以上が所属し、冒険者大学の学生にもメンバーがいるらしい。


 そんな事を考えていると、《陽光騎士団》の血盟主が俺達へと近付いてきた。


 「……君達が《アストライア》かい?」


 俺たちを見て眉を寄せたそいつに唐突に血盟を確認された。なんだこいつ。


 「そうです。名乗りもしない失礼な貴方は陽光騎士団の血盟主さんですね?」


 俺がわかりやすく挑発すると、陽光騎士団の血盟主は一瞬固まったがすぐに微笑んだ。


 「その通りだよ。3年の三上陽介だ。名乗りが遅れてごめんね」


 三上はそう名乗ると俺の事をじっと見つめ___こう言った。


 「坂本優人くん。君が“歩く性犯罪”“透視の覗き魔”だよね?」


 ちょっとまて。何言ってんのこいつ。


 「違います。意味が分かりません。新手のイジメですか?」


 「え!?違うのかい? 学校のあらゆる女子生徒の着替えを覗くって噂されてるけど…?」


 なるほど、わかったぞ。

 この間の伊藤先生のやつだな。どれだけ噂が独り歩きしたら“歩く性犯罪”とかまで昇格するんだよ。


 「全くの嘘です。事実じゃありません。それで、その事を確認する為だけに俺達に声をかけたんですか?」


 俺が少し不機嫌になって言うと三上はすぐに謝った。


 「ごめんごめん!君の人柄を確認してからじゃないと本題は話せなかったんだ。君が“()()()()()”じゃないなら良いんだ」


 …もういい、色々とめんどくさくなった。


 「それで? 本題とは?」


 「あぁ、本題ね。単刀直入に言おう、俺達《陽光騎士団》の傘下に入ってくれ」


 「いやです。さようなら」


 俺が即断り、勇気と剣心を連れて先を行こうとすると三上が「まって!」と俺の肩を掴んだ。


 「なんでだい?陽光騎士団は校内1の血盟なんだよ?」


 「先輩の血盟の傘下に入るメリットを感じません。では」


 「わ、わかった!じゃあ入らなくていい!ただ、来週日曜に行われる25層守護者攻略には参加して欲しいんだ!」


 俺達が去ろうとしたので三上が早口でさらなる要件を伝える。


 「25層守護者攻略? 生半可な人数と覚悟じゃ倒せないと思うぞ?」


 今まで黙っていた剣心が三上に向かっていう。


 「確か…坪内君だね。その点は大丈夫だよ。うちの血盟員は全員参加するよ、実力も確かだ。人数もうちを含めて42人集まってる、俺達は後6人募集しているんだ」


 42人+6人か。計8パーティーで守護者に挑もうと考えているようだ。

 だけど、


 「でも攻略隊らが60人で行っても壊滅したんすよ?それを48人でだなんて、無謀じゃないすか?」


 おお、勇気。

 足し算出来たのか。無謀って難しい単語も知ってたんだな。すごいすごい。


 「攻略隊は魔力銃に頼りすぎた。何より指揮官がダメだった。その点俺たちならもっと上手く動ける。人数が多すぎても前衛の動きを悪くするだけだしね」


 確かにそうかもしれない。

 けど、何で俺達を誘ったんだ?俺達は結成したての血盟だし、名前だってあまり知られてないはずだ。


 「何で俺達が?って顔をしているね。その答えは簡単だよ、西村校長からの推薦だ。今回の作戦も西村校長が立てた。攻略隊より冒険者の方が凄いという事を色んな人にアピールして、さらなる冒険者を募集したいんだと思うよ」


 西村さんの仕業か…。

 西村さんなら俺達のことをよく知っている。

 それに西村さんの作戦なら勝率は高いな。あの人が無駄に冒険者を減らしたりするはずが無い。


 「…分かりました。参加しましょう。ただし条件があります」


 「条件?」


 「俺達は基本的には作戦に従いますが、危ないと思ったら勝手に離脱します。もちろん離脱する際は三上先輩に知らせますが、俺達の離脱を止めないでください。俺達は傘下に入った訳では無く、対等な立場で守護者戦をするんですから」


 俺の条件を聞いた三上先輩は「それぐらいなら」と言ってOKしてくれた。


 「では日曜はどこに行けばいいんですか?」


 「25層のエレベーター前で集合だよ。時間は1時。遅刻する場合は俺に連絡してね」


 そう言うと三上先輩は端末を操作した。

 直後俺の端末に三上先輩からのフレンド申請が来た。

 フレンドになる事でお互いの連絡先を知ることが出来るし、位置情報を公開していれば場所も知る事ができる。色々と便利なものだ。


 俺は三上先輩とフレンドになり、軽い挨拶をしたあとその場を離れた。


 ◇


 「25層守護者戦…緊張するのです」


 今は昼休み、《アストライア》のメンバーで昼食をとっている。

 俺が三上先輩の提案を受け入れた時に皆には確認を取っていたため、皆は既にその事を知っている。


 「そーだね!楽しみだ!」


 莉奈はワクワクが止まらないようだ。

 本当に緊張しているのだろうか。


 「でもその前に21~24層までを攻略しないと行けないのです。もちろん無視して25層へ行く事も出来ますが…」


 なずなが「どうします?」と皆に聞いた。


 「そりゃ、金土で21~24層を攻略してから行くよな?」


 勇気が俺に確認してくる。


 「そーだな。金曜日に21~24層までの攻略を終わらせて、土曜は25層でクエストをこなそう。」


 クエストは最前線に近付けば近付くほど難易度も報酬も高くなる。

 なので俺達の戦闘経験を増やしつつ、報酬も貰っちゃおうという考えだ。


 「わかった。優人の案で行こう」


 剣心がおにぎりを片手に俺の考えに賛同してくれた。

 皆もそれでいいと言うのでそうすることにした。


 「守護者戦についてなんだが、俺達は最初周りの支援に徹する。それで守護者の動きを確認して慣れてきたら攻撃に参加する」


 「確かにその方が良いね!最初に突っ込んで対応出来ない攻撃くらって死ぬのは嫌だし」


 真っ先に突っ込んで行きそうな莉奈がウンウンと頷きながらつぶやく。


 「はい。それと周囲の状況にも気を配ってください。後衛が攻撃したいのに前衛が邪魔って状況とかにならない様に、です」


 「そうだな。勇気も他の盾役と上手くヘイトコントロールしろよ」


 1人の盾役がずっと攻撃を受け続けるのは危険だ。

 その辺は攻撃での連携よりも難しいかもしれない。


 「おう、任せとけ!」



 そんなこんなで話し合いをしていると、昼休みの終わりを知らせるチャイムがなった。


 ◇


 放課後、俺は戦闘訓練をする為に学校のグラウンド(戦闘訓練専用)に来ていた。

 昼食が終わったあと、凜々花に誘われたからだ。


 「お互いに魔法のみで戦うのです。攻撃は全部寸止めなのです、いいのです?」


 「あぁ、大丈夫だ。じゃあ始めるぞ」


 「はいなのです!」


 一瞬、周囲を静寂が包む。

 次の瞬間、俺に向けて氷の槍が3本凄まじい速度で飛んできていた。


 「っと、あぶね」


 俺は間一髪、氷槍と自分の体との間に土壁を作りだす。

 氷槍が土壁に衝突すると、物凄く大きな破砕を撒き散らし槍と壁が砕けた。


 俺はその土片を利用して土の片手剣を生成する。

 それを握り、氷片と土片が舞う中を一気に突っ走る。

 即座に凜々花を剣の間合いに入れた俺は思い切り斬撃を繰り出す。当たっても土剣が砕けるだけなので心配ない。


 勝利を確信した俺の視界を炎が埋め尽くす。

 凜々花が炎を纏ったのだ。凜々花は氷を操るのが得意だが、別に他の事が出来ないわけじゃない。


 それを忘れていた俺には、その攻撃は完全に不意打ちで効果的だった。


 ()はすぐに炎の中から離脱しようとしたが、足が動かない。


 「終わり、なのですっ!」


 凜々花の気合いの入った声とともに打ち出された氷の弾丸は俺の腹を撃ち抜き、_____そして()の全身が砕け散った。


 「!?」


 驚愕する凜々花と砕け散った()を上から見下ろす俺は、重力に引っ張られるままに加速して地面へと向かう。


 そして俺の接近に気付いた凜々花はすぐに氷壁を展開しようとしたが、間に合わなかった。


 俺の雷撃(当たってもちょっと痺れるくらい)が凜々花の身体を貫き、その華奢な身体を地面に伏せさせた。


 「惜しかったな、俺の勝ちだ」


 「分身なんてどうやって作ったのですか〜」


 凜々花が痺れた身体をさすりながら起き上がり、聞いてくる。


 俺はその質問に丁寧に答えた。

 凜々花の炎で覆われた瞬間に自分の前に土で俺の身体を作り出す。そのあとすぐに足元に爆風を起こして上へと飛ぶ。

 凜々花が俺の分身(といってもただの土)に気を取られてる間にとどめを刺した。


 「ううぅ〜、炎で優人の姿が良く見えなかったから気付かなかったのです…」


 「あぁ、俺も賭けだったよ。もしあの時凜々花が放電でもしてたら危なかったな」


 「電撃系は扱いが難しいのです…」


 凜々花は落ち込んでいるが、実際俺と凜々花の間にほとんど差は無かった。魔法だけに絞れば凜々花が俺より強くなるのは時間の問題だ。


 「もう1回なのです!」


 凜々花が元気よく俺に言う。


 「わかった、いくらでも付き合うよ」


 付き合うの言葉に凜々花が変な反応をしたが気にしないことにした。




 そして二人の訓練の結果は、俺が8勝で凜々花が12勝だった。

 後半の凜々花の成長速度は、ちょっと怖いくらいだった。

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