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巨人の館へようこそ 小さな小さな来訪者  作者: 黒六
過去からの略奪者
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1.大きな婚約者

新章です。

「ほ、本当に……シェリーちゃんとフラムちゃんなの?」

「はい、そうですよ」

「ソウイチを助けるにはこの方法しかない。うまくいって良かった」


 目の前に立つ二人の美少女を前に、アタシは混乱する思考を纏めていた。こういうことになるかもしれないという思いは確かに少しだけあった。そのヒントは、フラムちゃんがチワワと話してる内容にあったから。


 チワワはフラムちゃんの小さな身体では魔力が足りなくなると言ってた。それは言い換えれば出力が足りない軽自動車では大きな荷物を運べないことと一緒なんじゃないかって思った。ならどうすればいいか、答えは単純、軽自動車じゃなく、大型のトラックでも使えばいいだけ。


 となれば、フラムちゃんが自分の身体を大きくすればいいという結論に行き着くのは当然のこと。アタシたちにはわからない魔法という不思議な力なら、そのくらいのことは出来ちゃうのかもしれないから。だけど、アタシには一つだけ懸念があった、だからこの方法はあり得ないだろうと思ってたんだ。


 シェリーちゃんもフラムちゃんも、その姿は可愛らしくデフォルメされたフィギュアのよう。その姿のまま大きくなれば、見た目は……よくあるご当地ゆるキャラのようになるはず。確かにそれも可愛いとは思うけど。でも今二人の姿はアタシたちと比べても全然遜色ない。


「もうちょっと……こう……へんな姿になるかと思ってた」

「フラムが教えてくれたんです、出来るだけ自分がソウイチさんたちと同じような姿になるようにイメージしろ、って」

「この術式を遺してくれた存在は、そのイメージが足りずに悲しい思いをした。はるか昔には情報もほとんど無いし、仕方のない結末だったのかもしれない。でも今はいくらでも情報が手に入る。巨人の身体の構造を詳しく知ることで再現可能になった」


 感慨深げに言う二人。二人は元々可愛かったし、アタシたちと同じになればもっと可愛くなるって思ってたけど、これはアタシの予想を遥かに上回ってる。シェリーちゃんは流れるような綺麗な金髪に、白い肌。スタイルは……元々凶悪な存在感を放ってた胸が、これでもかとばかりに主張してくる。永いエルフ耳が特徴的。一方のフラムちゃんも、綺麗な青みがかった黒髪に、これまた綺麗な白い肌。お尻からは可愛らしい尻尾が生えてる。胸は……小ぶりだけどしっかりある。なんてこった、フラムちゃんは持たざる者仲間じゃなかったのか……


 そんなどうでもいいことを考えてる場合じゃない。とにかくお兄ちゃんのことは二人に任せるしかないんだから。


「チャチャさんが小さく見えます」

「チャチャ、私たちのことわかる?」

「ワンワン!」


 茶々は大きくなった二人に警戒することなく、千切れんばかりに尻尾を振ってじゃれついてる。お兄ちゃんが床に伏して元気がなかった茶々だけど、きっとこれなら大丈夫だと安心してるのかもしれない。


「チャチャ、これからソウイチの呪いを解く。チャチャは館の周りを警戒しててほしい」

「たぶん私たちはかかりきりになって他のことに対処ができません。お願いできますか?」

「ワンッ!」


 茶々は任せろと言わんばかりに吠えると、雨戸を開けろと催促してくる。タケちゃんが開けてやると、弾丸のように外に出て行った。二人が心配してるのは、あの女が何かしてくるかもしれないからだと思う。


 確かにあの女はヤバい。でも何より、あの女と一緒にいた男のほうがヤバい感じがした。アタシのことを舐めまわすような視線には他者への気配りなんてなく、すべてが自分の思いのままになると信じて疑わない、危険なものを感じた。それこそ強引な力技も辞さないという、いやむしろそっちのほうが得意な人間の持つ雰囲気があった。


 今の茶々なら誰かが近づいてきてもすぐにわかると思う。アタシとタケちゃんが何とか準備出来るだけの時間は稼いでくれるはず。あの女は今度の週末にまた来るって言ってたけど、そんな約束をきちんと守る保証なんてどこにもないんだから。でもまずは……


「二人とも、服着てよ」

「ハツミ、そんな余裕はない。これからすぐにソウイチの解呪を行う」

「あの……素肌を合わせることで人体に関わる魔法は効果がより発揮されるんです。だからこのままで……」

「いや、それはそうなんだろうけど……」


 確かにそう言われたらアタシとしては反論する余地は無いんだけど、全裸の超絶美少女二人がうろついてるなんて眼福ではあるんだけど、出来ればこういうタイミングじゃなくてもっと別の機会に、じゃなくてとりあえずタケちゃんには部屋の外に出てもらわないといけない。こんな規格外美少女に比べたらアタシなんて……


「と、とりあえずタケちゃんは外に出て! そして今見たものは全部忘れて!」

「わ、わかったよ。でも僕は初美ちゃんのことしか頭にないから安心して」

「ば、馬鹿な事言わないの!」


 慌ててタケちゃんを外に出そうとすると、そんなことを言ってきた。そこまで想ってくれてるなんて……あとでいっぱい御褒美あげないといけないね。



読んでいただいてありがとうございます。

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