7.深夜の告白
ちょっと短いです。
「ど、どうしたんだそれ……初美に作ってもらったのか?」
「は、はい……あの……その……似合ってますか?」
「ソウイチ、私のも見て欲しい。私のも似合ってる?」
「あ、ああ、似合ってるよ……」
部屋の入口で立ち話するのも寒いので、二人を部屋に招き入れた。部屋の灯りをつけると二人の寝間着がいつもとは全く違うものだったからだ。さっき入り口で見た時は豆球だけの薄暗い灯りだったので、いつもとは違うくらいにしか思えなかったが、明らかに違うその姿に思わずありきたりの言葉しか出てこなかった。
シェリーの寝間着は薄手のネグリジェのようなもので、しかも薄いので白の下着がはっきりと浮かび上がっている。身体のサイズにそぐわないプロポーションはこんな小さな相手なのにどこか色っぽく感じてしまうのは、俺がおかしくなってしまったのか?
いや、シェリーの身体がメリハリの効いた抜群のものであるのは水浴びの時に水着姿を見ているからわかってる。あの時は健康的なプロポーションだとしか考えていなかったが、長い金髪を一本の緩い三つ編みにしていたり、いつもはしていない口紅とかがより艶やかな印象を与えているのだろう。
それに対してフラムのほうはほぼ下着姿のままといってもいいだろう。ビキニの上下のような服は毛皮のような仕上がりで、おまけに靴と手袋まで同じような仕上がりだ。そして特徴的なのは頭に被ったナイトキャップで、犬のような耳までついている。よく見ればビキニの尻のあたりからはくるんと巻いた尻尾まである。そして全体の色は明るいオレンジ色だ。健康的な子供がませて背伸びしたような印象だ。俺はそんな趣味はないが、小さい子供が好きな連中なら即座にノックアウトされてしまうだろう。
「あ、あの……その……」
「ソウイチ、もっと見て。そして今夜私に捕食される」
「……初美め、どうしてこんな極端なことをするんだよ」
シェリーの格好はいつもの清楚で健康的なシェリーからは想像できない妖艶さを醸し出していて、さらにその格好になることに慣れていない羞恥心により上気した肌がより色っぽさを出している。もしシェリーが俺たちと同じサイズでこの状態になったのなら、間違いなく手を出してしまうだろう。
しかしフラムのほうは初美の趣味全開じゃないか。確かにまぁこんな格好で迫られたらその気になってしまうかもしれないが……こんな小さな体では可愛らしさのほうがはるかに勝ってるじゃないか。
「あ、あの……ハツミさんを責めないでください。こういう格好をお願いしたのは……私たちなんですから……」
「私のはチャチャをイメージして作ってもらった。チャチャは私たちの守護獣、この格好をすることで私はチャチャのように獣になる。ソウイチは私に大人しく蹂躙されていればいい」
「いや、まぁ……二人がいいなら別に……」
初美が何を考えているのかは大体想像つくが、この二人がそれに振り回されているんじゃないかと危惧した。しかしそれは杞憂だったようで、この格好は二人がお願いしたものらしかった。まぁそれはそれでいいんだが、問題はこんな夜更けに二人が何故俺の部屋に来たかだ。フラムの言葉から粗方予想できるが、冗談にしてはやり過ぎじゃないかと思うが……
「ところでどうしてこんな時間に? いつもなら寝てる時間じゃないのか?」
「それが……その……ハツミさんが……その……」
「ハツミはタケシと交尾の時間。私は残って観察したかったけど、追い出された。この寝間着ならソウイチが部屋に入れてくれると言っていた」
「あいつら……確かにこういうことは予想してはいたが……」
初美と武君が一つ屋根の下で暮らすということは、いずれこういうことが起こるだろうと思っていた。あいつらはもう大人だし、自分の責任においてそういうことをするのであれば俺に止める権利はない。起こるべくして起こったことだと受け入れるしかない。フラムを追い出したのは……確かに正解だ。いくら初美でもフラムに視られながら、などという特殊性癖は持ち合わせていないだろうし。
「わかったよ、今夜はここで眠るといい。毛布をもう一枚出すから」
「そ、その……私は……ソウイチさんと一緒に寝たいです!」
「私たちはソウイチと同衾するためにここに来た。だから私たちを好きにしていい、その覚悟はある」
「え? 何言ってるんだ?」
二人とも一体何を言ってるんだ? 一緒に寝る? 同衾? それってつまり……そういうことになることを理解しているということになるわけで……まさか初美達の行為に触発されたのか? いくらなんでもそれはないとは思うが……
「ソウイチ、私たちは真面目。私たちはソウイチにすべてを委ねる覚悟をしている」
「わ、私たちは……その……ソウイチさんと……ハツミさんたちみたいに……」
「おいおい、何を言ってるんだよ……いくらなんでも俺とシェリー達とじゃ体に違いが……」
「そんなのはわかってる。でもだからといって自分の気持ちを抑えることはできない」
「ソウイチさん、私たちはいっぱい考えました。そして自分たちの気持ちに嘘をつき続けることは出来ないと思ったんです」
二人がいつもとは違う神妙な表情で俺の方を見た。いくら鈍感な俺でもこの状況、そして二人の格好と真剣な表情を見れば二人が何を望んでいるのかはわかる。恋愛でくだらない駆け引きばかりしようとする都会の女とは違う真っすぐな言葉が胸に刺さる。この二人の望むものが何かなどは最早疑う余地もない。
「「私をソウイチ(さん)のお嫁さんにしてほしい(です)」」
異世界から来た小さな小さな女の子二人からのまさかの逆プロポーズだった。
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