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巨人の館へようこそ 小さな小さな来訪者  作者: 黒六
突然の婚約者
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5.助太刀するよ

 シェリーちゃんがお兄ちゃんに特別な気持ちを持ってることは薄々わかってはいたんだけど、まさか本人にはっきりとその自覚がなかったとは思わなかった。そしてそれ以上にフラムちゃんもお兄ちゃんに恋愛感情を持ってることも驚きだった。フラムちゃんのことだからある程度の打算もあってのことなんだと思うけど、それでもいつも冷静なフラムちゃんの決意にはすごくビックリした。


 でも二人にはもっと自由にしてほしいし、精神的な拠り所が出来るのならアタシとしては大歓迎。アタシにはタケちゃんっていう新しい彼氏が出来て、アタシの趣味にも仕事にも理解があって、優しく支えてくれて、そしてシェリーちゃんたちのよき理解者だなんて夢のような好条件で幸せの絶頂なんだけどさ。やっぱりほら、アタシたちばかり幸せになってるのはどうかなって思ったりもするワケで、二人がお兄ちゃんとうまくいけばもっと家族としての絆は深くなると思う。


 そりゃあの身体の大きさだから子造りなんて無理だと思う。テレビアニメみたいに身体を大きくする魔法なんてものがあればいいのかもしれないけど、そういう都合のいいものは無いってことはこれまでの二人の暮らしを見てもたぶんそうだと思う。もしあるのならフラムちゃんが既に使ってるはずだしね。


 でもフラムちゃんの話を聞けば、子供が作れないことも受け入れるつもりみたい。それで二人が納得するのであればアタシは全力で応援するつもり。お兄ちゃんの都合なんて正直どうでもいい。むしろ二人みたいに好きって言ってくれる相手なんていないんだし。こんな田舎に嫁いでくれるような物好きな女がいれば別だけど、生半可なスローライフ願望持ちの女程度じゃ農家の嫁なんて務まるはずないしね。


 決まった休みがあるわけでもないし、朝だって早い。肉体労働が多い割には収入もそんなに多くない。買い物とかはネット通販があるけど、近所にコンビニすらないしね。ご近所つきあいもあるし、実は都会よりも面倒なことが多いのも事実、アタシは子供のころからそういう暮らしで育ったから抵抗ないけど、小さな虫程度で怖がるような女じゃまず無理。アタシだってG以外の虫は平気だし。


 以前は変な女に引っかかりそうだったけど、シェリーちゃんもフラムちゃんも純粋な性格だってのは一緒に暮らしててよくわかってるし、この二人ならアタシも安心して任せられる。きっとお兄ちゃんの心の支えになってくれるはず。だからアタシが出来る限りの手助けをしてあげないと。


「ハ、ハツミさん……聞いてたんですか?」

「そりゃシェリーちゃんの泣き声が聞こえたら心配になるわよ」

「ハツミ、手助けしてくれるって本当?」

「ええ、アタシもお兄ちゃんには幸せになってほしいし、かといってくだらない女に取り込まれるのは馬鹿馬鹿しいし、その点二人なら何の問題もないでしょ」

「でも……身体の大きさが……」

「そういう行為だけが愛情を確認する手段じゃないわ。そういうことはたくさんある手段の一つであって、それが簡単だし性的欲求を満たせるっていう便利さもあるから皆が使うだけのこと、アタシも含めてね。でも、そういうことが出来ない事情を持つ人だって誰かを好きになっちゃいけないってことは絶対にないの。出来ないなら出来ることをたくさん集めて好きっていう気持ちをお互いに伝え続ければいいの。それが愛し合うってことだとアタシは思うよ」

「うん、ハツミはいことを言った。身体の大きさの問題を持ち出すより前に気持ちを通わせることが大事。そのためには私たちの想いをきちんとソウイチに伝えるべき」


 確かに二人とお兄ちゃんの体の大きさは体格差なんて言葉で言い表すことはできないし、それが夫婦としての夜の営みに支障をきたすのも当然。そしてシェリーちゃんたちの世界では夜の営みに支障が出るということは一般的には絶対に認められないことなんだと思う。でもここは日本、お互いの愛情を表現して伝え合う方法なんて他にもあるし、無ければ探せばいいだけのこと。そのための自由がここにはあるんだから。


 二人の気持ちはわかったから、後はその気持ちを伝える場を用意するのがアタシの役目。お兄ちゃんは予想以上に受け身だから、引くに引けない状況を如何にして作り出すかが一番の問題。かといって不自然な状況にしちゃうと構えちゃうだろうし、不自然じゃなく三人だけで一緒にいる状況にしないといけない。さらに言えば邪魔が入らないようにもしないと。


「とりあえず三人だけになれる状況にするから、そこから先は何とかしてね。そこでアタシが口出しするのも変だし」

「そうですよね……そこはやっぱり自分たちで言わないといけないですよね……」

「わかった、ハツミは状況を用意してくれればいい。後は私たちが自分の口から気持ちを伝える」

「でも……どうやってその状況を作り出すんですか? ソウイチさんの性格だと不自然な状況だと警戒しちゃうでしょうし……」


 やっぱりシェリーちゃんはお兄ちゃんと一緒にいた時間が長いから性格をよく理解してる。だから絶対に警戒されないような、それでいてお兄ちゃんが二人と一緒にいても不自然じゃない状況を作り出さないといけない。ここまでお兄ちゃんの事理解してくれた女の子なんてアタシの知る限り一人もいなかったし、是非とも二人には上手くいってほしいよ。


 お兄ちゃんはたぶんアタシが結婚して幸せな家庭を築くまで結婚しないと思う。それはアタシに何かあった時に支えるためで、自分の幸せなんていつも後回し。でもお兄ちゃんもそろそろ自分の幸せを見つけてもいいと思うんだよね。身体のほうはともかく、心の拠り所に二人がなれれば問題ないし、身体の欲求については三人で色々試行錯誤してもらえばいい。


「三人になれる状況についてはアタシに任せておいて。あとは……お兄ちゃんをその気にさせるために二人の魅力を最大限に引き出す夜着が必要ね。シェリーちゃんは健康的な色気、フラムちゃんは可愛さを前面に押し出すとして……これは作り甲斐があるわ」


 決して露骨なものじゃなく、それでいてこちらの意図をしっかり主張する夜着。所謂萌えフィギュア用の服であれば露出を高めにしてフリフリのものにしちゃうところだけど、お兄ちゃんの好みからは外れてるから……シェリーちゃんは清楚な可愛さと色気とがうまくミックスしたものがいいかな。フラムちゃんは……アタシの考えたとっておきを作ろう。


 二人の恋がうまくいくかどうかはアタシの動きにかかってる。二人の悲しい顔を見ることが絶対にないように、アタシの全力をもって当たりましょうか。

読んでいただいてありがとうございます。

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