表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
のんびり超短編集  作者: タクkura
5/6

極普通の反応(モ)

これは、『モノクロな日々』のこぼれ話です。

ですので、上記の物語の設定を使用しております、ご了承ください。

ストーリーとは一切関係がありません。


また、この話は4月の終盤頃の話です。

春の夜。

窓から見える世界は真っ暗。

光といってもごく小さなもので、あるとしても、街灯か、受験生の勉強部屋だ。

オフィスも、点々と電気がついている。

こんな時間は、人々は夢を旅しているものだ。


だが、漫画家である俺の姉、空乃は、原稿に追われそういうわけにはいかないようだった。

俺が部屋に行ったのは12時くらいだっただろう。

途中、姉の部屋のドアを見たときも、隙間から光が漏れていた。

漫画家ってめんどいんだなぁ……。

そんなことを考えながら寝たのだ。


「……舞! ……て! ……ったら!」

脳内に、聞きなれた誰かの声が響く。

俺はまだ夢を見てはいなかったが、もし見ていたとするならば、その声で夢から引きずり出されていただろう。

「……舞!起きて!優舞!聞いてる!?」

朝かと思いうっすら目を開いたが、朝特有の、鋭く明るい光はない。

「……まだ……朝じゃない……だろ?」

あ、起きたと言いながら姉がこちらを見た。

「そうよ、今は午前2時っくらい」

その淡々とした声に、少しイラついた俺はもう一度目を閉じた。

「あっこらっ! 優舞!」

その途端、姉が俺の枕抜き取り、俺は驚いて目をまた開けてしまった。

すかさず姉は電灯から垂れ下がる紐をとり、部屋の電気をつける。

「……何?」

「爪切り探して欲しいんだけど」

いつものとこに無くて、と続ける。

「……めんどい」

再度目を閉じたが、電灯の光のためか睡魔は来ない。

どうやら微妙に眠気が覚めてしまったらしい。

「ねぇー、爪切り! ペン握る時、爪が手に刺さって痛いの!」

「ああ! もう! 分かったっつーの!」

幸い今日はお母さんがいないため、怒りのままに大声を出せる。

いきなり起き上がった俺に、姉は目を丸くしたが、すぐに、下行くよ! と部屋を出て行った。



「あんじゃねーか!」

姉の様子の割に、爪切りは普通にあった。

というか居間の食事机の上に置いてあったのだ。

「だって、いつものとこに無かったんだもん」

いつものとこ、とは普段爪切りを入れている引き出しの事だ。

「そこに無くたって、普通にあんだろ! それぐらい探せよ!」

俺が近所に迷惑がかからない程度に、結構抑

えて怒鳴ると、姉は大袈裟にため息をつき、やれやれと首を振り言った。

「優舞も反抗期なのねぇ」

「こんな時間に無理やりおこされりゃ、誰だって怒るわ!」


春の夜、この声はどこまで響いたのだろう。







評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ