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「夏休みの宿題は夏休み明けに回収します。しっかりやっておきなさい。
では、充実した夏休みを。」
今日は終業式で、明日から夏休みだった。
私は大原夏海。
両親の死から、立ち直るというか、まだ、死んだという事を実感できない。 今年は大学受験の年。
夏休みは勝負の長期休業期間だ。
遊んでいる暇などない。
しかし、私はこの夏にやろうと思っている事があった。
今やらないと絶対後悔する事だ。
私は家に帰ると、カバンに荷物をつめた。
もちろん宿題も、勉強道具も。
この夏、私は自分に言い聞かせるため旅に出る。
両親とお別れするために、思い出の場所をまわるのだ。
お金は充分にある。
両親が私にたくさん残していたのだ。
そして、私のバイト代。
いけるはずだ。
私は、住み慣れた家を出た。
戻ってくるのは、1ヶ月後だろう。
鍵をしめ、私は駅へと向かった。
そのときから、運命の歯車が動いていたことを私はまだ知らなかった。