エル・ユンケ
現在地不明
朦朧する意識の中で私は長い夢から目覚めた。さっきまで見ていた夢は起きてしまうと大部分を忘れる。逆に幼少の頃に見た夢を覚えていることもある。私も今まで見ていた夢が面白かったのか怖かったのかハッキリしない。
ゆっくりと瞼を開いて起き上がり、思わず屈伸をとって両手を空に上げる。寝ぼけたように周囲を窺うと一気に目が覚めた。
今、私の寝ていたところは若緑色の草花が茂る広大な草原であり、奥には雪が積もる山脈が連なっていて、空は果てしなく青く澄んでおり太陽の陽光が私を照らして、山脈から吹くそよ風が草原を優しく揺れ動かしていた。
私は急いで立ちあがり草原を見渡した。すると、私以外に五人の男女が草原の上で眠っていた。寝ている五人のうち四人は私と同じ学校の制服を着ており、私のクラスメイトであるが一人を除いて交友関係も無く、話したこともない連中だった。もう一人はアロハシャツに黒のカーゴパンツ姿の白人男性。なぜか見覚えはあるがどこで見たかが思い出せない。
私は一番近くで寝ている見知った男子である牧野昌吾を起こす。
「ちょっと、昌吾、起きなさいよ!」
私は牧野昌吾の肩を揺さぶるが全く起きない。仕方が無く、私は牧野昌吾の腹部に跨り馬乗りの格好で彼の顔を数回叩く。
「…イッテェ!…なんだよ一体!!」
彼は目を空けて叫んだ。
「ななななな、なんで、リョーコが俺の寝床にいるんだよ。しかも馬乗りって!!」
無理もない。目が覚めたら幼馴染みの女の子が馬乗りしていたら誰だって混乱して叫んだりする。彼は顔を真っ赤に染めて狼狽している。
私は彼を起こして今、置かれた状況を確認させる。
「え…どこだよ…ここ?」
昌吾は私と同じように立ちあがり草原を見渡していた。
昌吾の起きた時に発した叫び声に起こされて今まで寝ていた四人が目を覚ました。