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異世界恋愛系 作品いろいろ

婚約者が最近そっけなくなってきていて……? 〜奇跡の出会いは一度きり〜

作者: 四季
掲載日:2026/08/01

 婚約者ダーベンが最近そっけない。


 挨拶してもまともに対応してくれないし、話しかけてみても明らかに話を切り上げようとしているような態度を取られるし、ティータイムや食事に誘っても何かと理由をつけて断られる。


 少し前まではそんなことはなかったのに。

 いつからかそんな風になってしまって。

 しかし、私に問題があったのかと尋ねると何もないと言われ、心当たりもないので、解決しようがない。


 そんな時、友人から「ダーベンが浮気している」といった話が伝わってきて、調査してみたところ――確かに彼は定期的に一人の女性と会っていた。


 ああ、そうか、そういうこと……。


 その事実を知った時は、なぜか、自分でも不思議なくらい納得できた。

 胸の内側を風が吹き抜けていくかのように。

 疑問、違和感、もやもや、それらすべてが風に流され一気になくなったかのようだった。


 証拠を集めてから、ダーベンのもとへ向かい、浮気を知ったことを伝えた。すると彼はかなり動揺していた。そして、婚約破棄する意向も伝えたところ、分かりやすく青ざめて「誤解だよ!」「ちょっとしたハプニングで!」などと謎の主張。ただ、そんな風に相手女性を想っていない、ということだけは一貫して言わなかった。その様子を見て、こんな状況でもそこだけは崩さないのか、と、より一層残念に思った。


 話し合いの終わりが近づいても、彼はまだ婚約破棄を免れようとしていて。

 必死な面持ちで「勘違いしてるよ!」「説明するから分かってよ!」などとまるで私に非があるかのような言葉を並べていた。


 彼が「婚約破棄は嫌だ」と言うのは、ただの保身。

 私と離れることが嫌なわけじゃない。

 そういうところに幻滅した。

 結局彼は自分の身を守りたいだけ、他の人のことなんて少しも考えていない。


 ――こうして私たちの婚約は正式に破棄となった。


 ダーベンと、浮気相手の女性と、それぞれから慰謝料を取れたことは良かった。

 その件については伯父に大変お世話になった。

 もちろん、それ以外にも支えてくれた人がたくさんいて、そうした力もあってすべてをやり終えることができた。

 関わってくれた人、励ましてくれた人、など……私の味方でいてくれたすべての人に感謝している。



 ◆



 あの後少しして、ダーベンと浮気相手だった女性は破局したようだった。

 慰謝料云々の件で揉めたらしく。

 二人が積み上げてきたものは呆気なく崩れ去ったようだ。


 ダーベンの浮気相手だった女性は、その後、飲み屋で知り合った怪しい男に引っ掛かり痛い目に遭ったと噂で聞いた。


 それから三年ほどが経った頃、ダーベンが借金回収の者と揉み合いになり落命したという情報が耳に飛び込んできた。

 浮気相手だった女性と破局した後、別の女性と親しくしていたそうなのだが、ダーベンはその女性にかなりの額貢いでいたそうで。貢ぐにあたり借金をしていたらしい。で、その返済が遅れ遅れになっていたらしく。その借金の返済を求めにやって来た人と言い合いになり、命を落としてしまった、ということのようである。



 ◆



「……で、その時のこと考えてたんだ?」

「ええ、ちょっと思い出していたの」


 あれからどのくらい経っただろう。

 もう思い出せないけれど。

 私は今、良き人と夫婦となり、穏やかに暮らしている。


「浮気されるなんて災難だったね」

「ええ……でも、もういいの。だって、あれがあったから貴方に出会えたんだもの」


 ダーベンとの関係を終わらせて少し暇になっていた時に知り合ったのが彼、現在の夫だ。


「僕としては幸運だったね」

「私も、よ」

「懐かしいな。でも、初めて見た時、絶対好きになるなって思ったんだ。君のこと」

「正直、私はあまり深く考えていなかったけれど……でも、嫌な感じはしなかったわ」


 初めて出会った日のことは覚えている。


 私が落としたハンカチを彼が拾ってくれた。

 それがすべてのはじまりだった。


 あの日、暇だからと街へ出掛けていなければ、彼に出会うことはなかったし結ばれることもなかっただろう。

 夫婦として同じ時を過ごすこともきっとなかった。


「そう考えると、ちょっとロマンチックだね」

「ハンカチを落としたのなんて、人生で、あの時一度だけだわ」

「奇跡!」

「本当に」

「もう落とさなくていいよ。一回きりでいいんだ、ああいう奇跡は」

「そうね。……もう奇跡的な出会いなんて要らないもの」



◆終わり◆

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