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第8話





 夜に街を出発する。

 もしかしたら貴族の追撃がある可能性もある。

 最初のウチにある程度距離を取った上で、場所の良い所でやり過ごすなり状況を整えるなりしてから先に進む。

 そういったことを話し合いながら先を急ぐ。


 流石に冒険者をしてるメンバーに比べて体力なんてものがない俺が、そのペースについていける訳もなく―――


「……シンさん、凄いですね。それとも流石は商人というべきでしょうか」


「いえいえ」


 予想外にペースについていく俺に彼女達が感心した声をあげる。


 まあこれに関しては決して誇れることではない。

 実は、これにはカラクリがあるのだ。



 ■不倒の指輪


  装備すると一切疲れなくなる。

  ただし装備すると全てのステイタスが-10される。


 平均価格:金貨800枚~1200枚


 戦闘中に疲労で動きが鈍ったり、動けなくなることを考えれば便利だと言える装備。

 マイナスデバフが厳しいが、これを何とか出来るなら非常に便利な品であり、高額取引にも納得出来る。



 ■疾風の靴


  装備者の移動速度を上昇する。

  また空中で1度だけ再度ジャンプすることが出来る。

  (再ジャンプは1回のジャンプにつき1度という意味)  


 平均価格:金貨300枚~金貨660枚


 単純に歩く速度が上昇するだけじゃなく、何もない空中で1度だけ2段ジャンプが出来る装備。

 着地すればジャンプ回数はリセットされるので、何度でも気軽に使える。

 シンプルで攻撃能力も防御能力もないスキルなので使い手を非常に選ぶが、使える人が使えば神アイテムになるだろう。

 そんな玄人向けな装備。

 


 ■隕石のかけら


  とても貴重な石。

  全てのデバフ(マイナス要素)を無効化し、全ての状態変化に中耐性。


 平均価格:参考価格なし


 まさかの一切取引がされたことが無いアイテム。

 全てのマイナス要素を無効化し、更に全ての状態異常にもある程度の耐性が貰える便利な装備品。

 不倒の指輪みたいなマイナス要素が強いアイテムと非常に相性が良いといえる。

 非常に便利アイテムなので売らずに持っていたり、大事な人に渡したりする感じで市場には出てきていないのだろうと予想出来る。



 とりあえずこれらは成長した通販スキルで大人買いして装備している。

 おかげでどれだけ走ろうが疲れないし、ステイタスが上昇しているのでむしろ動きやすい。

 歳を取っていた頃と比べると、なんと若い体の良いことか。



 途中モンスターというか、オオカミとかゴブリンみたいなファンタジー要素たっぷりなものも登場したが彼女らが強かったので、そりゃもうあっさりと処理された。

 通販レベルが上がったことで、ついに向こうですら通販で購入出来なかった本物のハンドガンとかが購入可能となったので購入してある。

 ぜひとも撃ちまくって練習したいが、彼女らの居る手前そんなことは出来ないのが難点と言えば難点か。

 予想外だったのは、彼女らがモンスターの一部で売れる部分を持ち帰る際に確認を取ってきた点ぐらいだろう。

 護衛依頼の場合は、道中に出てきたモンスターの素材については話し合いでどうするか決めるらしい。

 俺の場合は、彼女らに全て権利があるとして利益分配を断った。

 その代わりにそれ以外の余った部位―――というか死体そのものを貰うことにした。

 彼女らが見ていない所でコッソリと死体をスキルの買い取りにぶち込むと、結構な値段で買い取ってくれる。

 おかげで臨時収入が結構な額になり、さながら異世界でボーナスをもらった気分である。


 旅は順調で夕暮れになる前にはキャンプ地を決めて準備をする。

 道中の食事は、基本的に護衛依頼の場合は依頼者側の負担となるらしい。

 しかし私にはそんなものは些細なことだった。

 万能どこでも火付け兵器ファイアーマン。

 大型鍋には豪快にミネラルウォーターをぶち込む。

 あとは日本が誇るお湯だけで作れる食事の数々だ。


 カップ麺のラーメン・焼きそばにスープ。

 湯で温めるだけで出来るご飯やレトルト食品。

 そしてコーヒーや紅茶なども完備。


 テントも何故かスイッチ式になっており、スイッチを押すと瞬間的にテントが設営される。

 そして安全レバーを引いてボタンを押すとコンパクトな荷物に戻る。

 小さな簡易トイレ代わりの小さなテントも同じだ。

 こちらは勝手に中身がトイレになってくれて、しかも汚物は全て自動で消え去る。

 周囲を軽く板を立てたものに上からテント布を被せて目隠しをした即席シャワー室も人気だったりする。

 これなんてシャワーの一部がテントと一体化していてどこから水を持ってきているのか不明である。


 まあそれを言うとファイアーマンなんて燃料入ってるのか怪しいし、使用したペットボトルや袋などはゴミ箱に入れると何故か消え去る。

 要するにどういう原理でそのように動いているのか解らないものばかりとも言える。

 ……元の世界でも飛ぶように売れると思うよ、これ。

 電池式のランタンもちゃんと電池ごと購入して使用すれば、焚火に頼るよりも明るく便利だ。


 一瞬は自粛すべきかと思ったが、女性ばかりに不便を強いるなど現代人の感覚ではあり得ない。

 というか、もういっそ突き抜けてぶっちぎった方がマシなのでは?と考えるようになっていた。


 最初は、凄く萎縮していた彼女らも最近では食事を非常に愉しみにしている。

 チラッと確認すると、どうやらあまりに豪華過ぎる食事に驚いていたらしいとのこと。

 まあそりゃカップ麺1つでも違うよね。

 試しに聞いた旅先での食事を聞いてみたが、硬すぎるわ味が無いわという干し肉に微妙に塩っぽい味が付いたお湯。

 そしてたまに黒パンが半分ついてくるだけらしい。

 何その拷問。


 そのせいかカレーを出した時なんてエレナさんとルルさんが「彼女が居ないならぜひ!!」と抱きついてきた。

 もちろんリシアさんに怒られたり、こちらが丁重に場を収めたりしたので問題なかったが、おかげでドキドキしちゃったよ。

 前の人生でもあんな美女に抱きつかれるなんてこともなかったし、胸を押し付けられることもなかった。

 どうせ社交辞令というか食事を豪華にして欲しいみたいな延長でのリップサービスなのだろうが、危うく本気にしちゃうところだった。

 この世界は一夫多妻も一妻多夫も何でもOKらしいからな。

 2人ぐらい余裕で面倒みられるぐらいの稼ぎは叩き出せるし、いっそ大きく稼いだ後は美女を連れてどこかに引きこもってハーレムというのも悪くはないかも。


 まあそんなことを考えていると、ふと思う。

 どうせ店を大きくするとかなれば嫌でも繋がりは出来るだろう。

 ならもういっそのこと自粛無しで思いっきりぶっちぎった方が早いのでは?と。

 利用出来そうなコネを早々に作って保護して貰いつつ、多少の便宜を図る。

 面倒な事は極力回避するなり、人を雇って押し付けるなりしてというのも悪くない。

 そうなるとファンタジー世界でよくある奴隷制度か?

 というか奴隷ってあるのか?

 ……まだまだ分からんことが多いな。

 知識不足が一番足元をすくわれる危険性が高い。

 店を持つにしろ、しばらく露店をするにしろ、そろそろ方針を考えなきゃなぁ。




■side:リシア




 信じられないぐらい美味しい食事を旅先で食べながら考える。

 田舎の山奥から行商人としてやってきたというシンさん。

 普通の田舎者なら村の特産品だったりを持ってくる。

 儲けとしても銀貨数枚も行けば十分だ。


 しかし彼は違う。

 貴族に目を付けられるほどのものを売っている。

 試しにと道中で見せて貰ったが、とても田舎の村人が用意出来る売り物ではない。

 武器はありきたりながらも品質が良く、サバイバルナイフというナイフに関しては、多目的ナイフとしてはかなりの出来だ。

 エレナが欲しがったのも解る気がする。


 そして貴族に目を付けられた石鹸。

 確かに石鹸そのものは存在する。

 ただしその辺の街にあるのは獣臭の酷いものだ。

 貴族用のものでも、ここまで白い色ではないし完全に無臭でもない。

 なのにシンさんが持つものは、真っ白でほのかに香りがする高級品。

 「感想を聞かせて欲しい」と半ば強引に1つ渡されたので全員で使用したが、汚れが綺麗に取れるだけでなく肌に花の香りが付く素晴らしいものだった。

 どこで仕入れたのか気になるのも解るほどの品だ。

 更に彼自身が身に着けている装備品も迷宮産だろうか、かなり高価なものを複数身に着けている。


 何より、この一瞬で完成する野営設備の数々。

 こんな便利なもの見たこともなければ、聞いたこともない。

 しかも明らかに見た目の容量を超えるものが入る魔法のカバン―――魔法バッグまで持っている。

 その魔法バックも野営設備から食材まで様々入るのだから馬車1台分……いや2~3台分はあっても不思議ではない。

 間違いなく国宝クラスだ。

 食事も香辛料などを大量に使うし、見たことも無い料理の数々。


 田舎から出てきた行商人ではなく、貴族……いや王族クラスが身分を隠して行商人をやっていると言われた方がまだマシだと思えるほどだ。

 そもそも緊急であっても護衛に1日金貨3枚なんて大商人クラスしか出せないだろう。

 それを惜しげもなく出すという時点で田舎の行商人などではない。


 何か訳アリだというのは明白だ。

 そして貴族とあまり揉め事を起こしたくないというのも、その訳アリに関係するのだろうか。

 どちらにしろ、先に伝令を家に向けて入れておいた方が良さそうね。

 先に色々と根回しをしないと彼は何かあれば、またスグに移動しかねない。


 エレナとルルが彼に飛びついたのも解らなくもない。

 冒険者なんて若い時にしか出来ない職業で、命懸けだ。

 一発逆転の夢もあるが、ほとんどはそれなりで終わってしまう。

 それならこれだけ女性に囲まれながらも、そういった欲を出すことなく女性に気を使ってくれる人物。

 見た目も悪くないし、まだまだ若そうだ。

 しかも明らかにお金持ちで複数の女性を余裕で囲える財力を持ってそう。

 これから店をやるとしても、商品が良いので間違いなく売れる。

 あとは騙されたり変なのに目を付けられたりするのが問題だが、自分達がその辺を注意したり今まで冒険者をやってきて築いてきた人脈を利用するのもアリだろう。

 何より良い商品の数々が仕入れられるのなら、各方面に恩を売ることすら出来る。

 間違いなく大商人の妻として何不自由なく暮らせるだろう。

 下手な貴族の妻よりも、むしろ自由で良い暮らしが出来るのではないだろうか?


「うぬぬぬ……」


 ここはやはりお母様と相談して決めるべきかしら?

 とりあえずお父様は……当面は無視すべきね。

 とにかく恩を売って、根付かせて、人間関係で縛る。

 みんなにも説明してジワジワと周辺から固めていくべきだわ。






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