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第16話




 平和にやれていると思っていた所に突如降って湧いた店への泥棒騒ぎ。

 それを解決しようとしてリシアさんに捕まってしまった訳だが。


「そういうことならウチで処理しますし、何なら私達で店の護衛もやりますからっ!!というか護衛するって言ってましたよねっ!?」


 何故か凄くやる気なんだよね、リシアさん達。

 こっちとしては相手の規模とか次第で捕まえるかどうかとか色々決める予定だったので、そこまで高ランクの冒険者を雇うつもりはなかった。

 コッソリ襲撃に来る連中の顔や人数だけを報告し、捕まえられそうなら捕まえてってぐらいの依頼予定だったからだ。

 しかし彼女らは、もう完全に捕まえる気だ。

 あまり女性達だけで危ないことをして欲しくはないというのは、前の世界の価値観を引き摺っているからだろう。

 こちらの世界に来た以上は、こちらに合わせる必要があるとは言え、全てが全てを合わせる気はない。

 俺がやりたいこと、思っていること、そういったことを我慢してしまったら何のための異世界だと言える。

 などとカッコつけたこと考えている間に、彼女達はどんどんと話を進めてしまう。


 俺個人を狙う可能性もあるとして、基本前衛であるリシアさん、エレナさん、ユニさんの3人のうちから2人。

 そして後衛のジュリアさん、パメラさんの2人のうち1人の計3人が護衛として周囲に居るようになった。

 更に店への襲撃を考慮して全員が店に寝泊まりすると言い出して非常に困った。

 とりあえずあまり使用していない2階の荷物を全て地下室に投げ込んで、大急ぎで住める環境にする。

 といってもまあ2階にベッド等を置いて休憩スペース化するだけなのだが、それでも大変だった。

 特に防犯用のトラップ関係は全て切らないとね。


 今回の件は、リシアさん経由で警備隊や辺境伯家へ伝わったようで、巡回を強化すると言っているらしい。

 流石にここまですると相手も大人しくなったというべきか。

 それとも一度失敗してそのまま諦めたのか。

 1週間ほど平和な日々が続いた。


 何か変化があったかと言われると、暇なのかリシアさん達が店を軽く手伝ってくれるようになり、ご近所のおば様方からは『どの娘が本命?』などと揶揄われるようになったぐらいか。

 リシアさんは貴族令嬢なのだから、俺のような平民の嫁にはならんだろうに。

 他の娘達も、見た目は若者でも心がオッサン超えてジジイに踏み込んだことがある男なんて興味ないだろう。

 まあ精神年齢に関しては肉体に引っ張られているのか、若くなった気がするが……まあ誤差みたいなものだ。

 そう言えば最近彼女達の謎のアプローチが多いが、アレも揶揄っているのだろうか。

 本当に若者だった頃ならきっと良い反応をしてあげられていたのだろうが、流石に人生色々あった身としてはね。

 例え女性に縁が無かった人生でも、そこまで露骨な反応はしないよ。


 こうして何事もなく平和な日常が続くと思っていたが、何気ない日の朝に突如として解決した。


 朝、いつも通り店に向かうと店の近くで朝早くから人だかりが出来ていた。

 しかも警備兵が忙しそうに走り回っているじゃないか。

 何かあったのかと店へと向かうと、交換してあった正面の防犯シャッターがぶっ壊れていて、店の前に縄で縛られた男達が4人。

 その周囲にリシアさん達が旅の時みたいな完全装備で立っていた。


「―――ああ、解決したのか」


 何となく呟いた俺の言葉が答えだった。

 男達4人は、前々から賞金首になっていた連中らしく儲かって良そうで更に良いものが大量であるウチの店に目を付けたそうな。

 よく賞金首が街中に居たなと思うが、まあ手引きした人が居るのだろうね。

 それに関しては警備や辺境伯家の仕事になるので、俺からすればこれで終了だ。


 無償で良いと言われていたが、やはり報酬はあるべきだ。

 ということで、そろそろ休暇を終えて迷宮探索をしようとしている乙女の旗のメンバーには装備を贈ることにした。


 リシアさんにはこれ。


 ■オリハルコンの片手剣(火炎石付き)

  全てがオリハルコンで出来た剣。

  ガード(鍔)の部分に火炎石が付いており魔力を通せば炎属性が付与される。


 *付与特性:炎属性

       対炎耐性+10

       物理防御+10


 平均価格:参考価格なし


 エレナさんには、ずっと悩むほど欲しがっていたので。


 ■バスググラソード


 をプレゼントすることにした。


 ルルさんには、年季の入った槍だったので代わりにと槍をあげることにした。


 ■雷竜爪の槍

  雷竜の爪を加工して槍先にした直槍。

  雷属性の付与効果があり、一定確率で相手を麻痺させることがある。


 *付与特性:雷属性

       対雷耐性+10

       麻痺効果(中)


 平均価格 金貨350枚~480枚


 ジュリアさんは攻撃系の魔法使いらしいので、それに合わせたものを用意した。


 ■精霊の首飾り

  精霊から友好の証として貰えることがある精霊石を使用した首飾り。

  美しい見た目で、装備者に精霊の加護を授ける。


 *付与特性:精霊の加護(全てのステイタスが+5%上昇)

       物理防御+10

       魔法防御+30

       魔力回復(小)


 平均価格 金貨500枚


 パメラさんは新しい杖を欲しがっていると聞いたので杖にした。

 回復魔法の効果が2倍になって消費MPが半減するという素晴らしい杖だ。


 ■魔樹の回復杖

  樹齢500年以上の魔樹の枝から作られた杖。

  回復魔法の補助に特化している。


 *付与特性:聖属性

       回復支援(回復魔法の効果+100% 回復魔法の消費魔力-50%)


 絶対に受け取らないと思ったので、まずは何も言わず手伝いを装ってそれぞれ装備を持たせる。

 そして思いっきり返却は受け付けないと主張しながらプレゼントした。

 やはり思った通り受け取りを拒否しようとしてきたが、頑張ってゴリ押ししまくった。


「ウチの宣伝にもなるので」


 と店の売り上げに貢献して貰うから100%善意じゃないよという感じにしても、かなり渋られた。

 実際、危険な冒険者稼業だ。

 怪我だけでなく、万が一にでも死人が出て欲しくないという俺の想いもある。

 というかだ。


「仲良くなった皆さんに万が一があったら悲しい」


 と言ったら今までのやり取りはなんだったんだってぐらいに素直に装備を受け取ってくれたのにはびっくりしたよ。

 まあ実際問題として、強力そうな装備を使って貰えればどれぐらい影響あるのかとかも知りたいからね。

 こうしてウチとしては最小限の被害で今回のトラブルを解決出来た。


 ……と思っていたのだが。


「う~ん、困った」


 事件が解決してこれで終了。

 いつもの日常が戻ってくるはずだった。


「毎度ありがとうございました~」


 笑顔で接客するユニさんに、思わず微妙な顔を向けてしまう。

 何故に彼女が未だに店を手伝っているのか。

 俺だってわからんよ。


 というか2階が完全に乙女の旗の休憩所になってしまっている。

 私物も多く置かれているっぽくて、もはや俺が入ることすら遠慮してしまう乙女の部屋と化していた。


 いや、君らは辺境伯様の屋敷にある離れの1つを丸ごと本拠点として利用してるんでしょ?

 だったら何でこっちも利用しようとするんだ?

 別にもう店を手伝うことも必要ないだろうに。

 この件に関しては何度か直接言ったんだが、誰に言っても何を言っても曖昧な回答しか返ってこず現状に変化がない。

 まあ2階が無くても困らないと言えば困らないのだが……。


 最近はそろそろ迷宮探索に行くと言って準備をしているらしいが、そのほとんどがウチの2階である。

 ……まあ必要なアイテムを全てウチで購入してくれているってのもあるし、強盗の件で世話になったのもあるから強く言いにくい。

 それに美人が常に周囲に居るのは華やかで良いし、最近は彼女達目当てで買い物に来る男どもも増えた。

 なので売り上げに貢献して貰ってるというのもある。


「……まあ、いいか」


 その内、屋敷の方に戻るだろう。

 もう色々と考えるのが面倒になって全てを投げ捨てる。

 なるようになるだろう。

 そう思いながら今日も地下室でコッソリ通販スキルを使って品物を取り寄せた。





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