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マリアンヌは、王宮の一室に連れて来られた。どうやらジュリアが滞在している客室のようだ。そこで、ジュリアの侍女により浴室で体を洗われた。バスタブの中には花が広がっており、甘い香りが立ちこめていた。その香りを嗅ぐと、庭で愛情を込めて花を育てていたグンテを思い出した。これほど贅沢な入浴は今までに味わったことがない。浴室の壁もよく見ると細かな模様が描かれている。浴室内の至る所をまじまじと見て、マリアンヌは感心したのだった。
すっかり綺麗になったマリアンヌは、侍女に髪を整えられながら、百面相しているジュリアの前に立っている。
部屋の中は沢山の箱が積み上げられ、いくつもの山が出来ていた。ジュリアはそれらを開けては、マリアンヌの体に合わせる。
「これも似合いそうだわ…。いや、こちらの方が…。」
ぶつぶつと独り言を言いながら、積み上げられている箱を次々と開封していく。いつの間にか、部屋は空き箱やそれに使われていたリボン、包装紙で溢れかえっていた。
「ジュリア様そろそろお決めください。マリアンヌ様がお疲れですよ。」
髪を結い終わった侍女は、マリアンヌの傷ついた手の包帯を撒き直しながらジュリアに進言した。
「わかってるわ。でもこんなに素敵なモデルなんて今後出会えないじゃない。」
「終了です。あと10数えるうちに終わらせてください。10…9…。」
「分かった分かった!!もう!!」
二人のやりとりを見ていたマリアンヌは思わず吹き出した。
「ふふっ…。」
ジュリア達はマリアンヌの顔を見る。
「あ、ごめんなさい…。不快にさせるつもりはなくて…。」
「いいえ…。笑顔がとても素敵で見惚れてしまいましたわ。」
ジュリアは自身の頬に両手を当てて、感嘆の声を漏らした。
「ユリアンヌ様にこのような素敵なご家族がいらしたなんて…。もっと早くにお知り合いになりたかったです。」
「…ユリアンヌのことを知っているのですか?」
「ええ。でも私はあまり好意をもたれていなくて…。お茶会にお呼ばれしても、目を合わせていただけないこともしばしば。」
「身内の者が失礼なことを…すみません…。」
「え!?マリアンヌ様が謝ることなんて何もないですわ!」
「でも…。」
「何もお気になさることなんてないです!」
そう言いながら、ジュリアはマリアンヌに手際よくドレスを装着させた。アイボリー色の上品な布で作られたドレスだ。裾の方には金の糸で細かな花が描かれている。ぱっと見るとまるで花嫁衣装のようだ。
「本当綺麗です!!絶対ギルヘルム殿下も赤面なさるはずです!」
「そ、そうかしら。」
「さぁ!すぐにお見せしましょう!」
「え!?どこへ?」
心底呆れ返っている侍女を残して、ジュリアはマリアンヌと共にギルヘルム達のところへ向かったのだった。




