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アルヘルムが連行された後、謁見の間に静寂が訪れた。兄が存命のうちは自分が国王になるとは思ってもいなかったギルヘルムは、衝撃が隠せないといった表情でヴィルヘルムを見た。
「ギルヘルム、この件について異論は無いな?ギルヘルムは今日この時を持って、王位継承第一位とする。」
「……国王の御命令とあらば。」
ギルヘルムは膝をつき、その命に従った。一呼吸して立ち上がると、意気揚々としたクレマンが肩を組みにきた。
「やったな!」
横を見るとクレマンが白い歯を覗かせ、親指を立てている。
「うるさいな。」
「いいじゃねぇか!未来の国王同士仲良くしようぜ!」
ギルヘルムは、ため息をつきクレマンの腕を外した。そしてその手で握手を交わすと、真剣な面持ちでクレマンに向き合った。
「長い付き合いになりそうだ。マリアンヌのことをよろしく頼む。」
「任せろ。」
「すぐ奪い返させてもらう。」
「奪ってはねぇよ。」
軽口を叩き合った後、ギルヘルムとクレマンは、先程から一言も発することなく呆然としているマルクスの方へ視線を向けた。
「父上、この者たちの処分を。」
ギルヘルムの声に三人の肩が跳ね上がった。
「そうだな…。マルクスは有能だっただけに、無くすのは惜しいが…。」
「国王陛下!私は何年もこの国の宰相として貢献して参りました。」
「あぁ。それは認めよう。」
マルクスの口角が上がる。自分のこれまでの功績と、自他共に認める有能さ。これら評価され、罪が軽減されるだろうという確信があった。
「だが…。」
ヴィルヘルムの声がまた一段と低くなる。マルクスのその確信を突っぱねるように言い放った。
「お前の代わりはいくらでもいるのでな。」
ヴィルヘルムの合図で、近衛兵は絶叫するマルクスを連行していった。
マリアンヌはヴィルヘルムの顔を見た。ヴィルヘルムの目の奥に強く恐ろしいものを感じた。情に流されず、不利益となれば即座に切り捨てる…大国の国王とはこういう人のことを言うのか…。
長年宰相を務めた男ですら、簡単に切り捨てられたのだ。残されたセリスとユリアンヌは自分達の運命を悟り、マリアンヌに慈悲を乞い始めた。
「ごめんなさい…お姉様……。ごめんなさい許して。」
「私たちは貴女に嫉妬していたの。お願いよ。貴女から奪ったものは全て返すわ。」
涙を流すユリアンヌ達の姿を見てマリアンヌはひどく動揺した。




