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放置令嬢の立て直し  作者: 道野草花
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4

「叔父様もお身体にお気をつけて…っと。できたわ。」


 ペンを戻し、顔を上げると陽が沈みかけていた。マリアンヌは蝋燭台に火を灯すと、そっと持ち上げた。そして手鏡のある台へ近づき、反対の手で手鏡を持ち、蝋燭台を代わりに置いた。ゆっくりとベッドへ腰をかけると、鏡に映る自分をぼんやりと眺めた。


「手紙は書けたのか?」

 今度は鏡の中の者から話しかけてきた。


「ええ…。」

「どうした?」 


 先程の報告の時の声とは違い、力無く応えるマリアンヌに違和感を覚え、心配そうに声を掛ける。


「数ヶ月後、私はここで自害するのね。」


 マリアンヌはそういうと、ベッドシーツを撫でた。


「そうはさせない。」


 鏡の中の者は、いつになく真剣な口調で返したが、そこには怒気が混じっているようだった。


「ねぇ、本当にアルヘルム様はルードリッツ家に婚約を申し込むの?」

「あぁ。」

「そう…。でも、ユリアンヌと結ばれるのね。」

「……。」


 鏡の中の者は黙り込んだ。肯定していることになるが、掛ける言葉が見つからない。


「私は放置されたまま野垂れ死ぬと…。」


 マリアンヌは鏡の中の者の言葉遣いを真似、それから自嘲気味に笑った。そうした笑みですら、聖母を彷彿とさせる儚さを纏い、ただただ美しかった。


「マリアンヌ、俺が…今度はちゃんと…。」


 鏡の中の者は、苦渋に満ちた顔をしていた。



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