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悪いことは立て続けに起こるとはこの事なのだろうか。
昼前にエリザベスからユリアンヌが来たとの報告を受けたが、具合が悪いと伝えてもらったところ、部屋までズカズカと彼女が来たのである。
そして今、ベッドに座っているマリアンヌと、ドアの前で腕組みをしたユリアンヌが対峙している。
「具合はいかが?」
「心配いらないわ。」
「ふーん。お父様がいらしたから体調崩した…とかいう失礼な話ではないわよね?」
小首を傾げて皮肉たっぷりにユリアンヌは言う。それでも、マルクスとのやりとりに比べればまだ耐えられた。
「そうではないけれど…。」
「あっそう。」
マリアンヌの体調には興味がないようで、それに関する話を早々に切り上げ、ユリアンヌは連れてきた使用人に合図を送る。使用人は二つの大きな箱をマリアンヌの前に置いた。一度開封されたようで、箱は少し歪んでいた。
「…これは?」
「少し前に届いた叔父様からのお姉様への贈り物。」
「……。」
ユリアンヌの口から"叔父様"という言葉を聞きたくはなかった。手鏡を持つ手に力が入る。アランのことを叔父様と呼んでいることに嫌悪感を抱いてしまった自分にも嫌気が差した。
「一週間後に叔父様がいらっしゃるから、これを着なさいってことよ。どちらか好きな方を着てどうぞ。」
「分かったわ。」
ユリアンヌはマリアンヌに近づいて、耳元でそっと囁く。
「……これまでの贈り物、ちゃんと大事にしているって言ってくださいね?」
これまで数々の贈り物が届いていた。アランからの手紙には、毎回のように、今日は何を送ったかが記されていた。一度もマリアンヌの手元に届くことが無かったが。
マリアンヌが頷くと、冷ややかな笑みを浮かべたユリアンヌは背を向けてドアへと向かった。
「あぁ、大事なことを忘れていたわ。アルヘルム様が明日いらっしゃるの。以前お話しした約束、守ってちょうだいね。お姉様。」
パタンとドアが閉まるとマリアンヌはベッドに倒れ込んだ。手鏡には顔は映してないが、マリアンヌの体が映っているからか、気遣う声が聞こえる。
昨日からの疲労も蓄積されているのか、瞼が重い。マリアンヌは手鏡を胸に抱き締めて「今日は、とても疲れたわ…。」と言って、そのまま目を閉じ眠ってしまった。
ことの一部始終を外で聞いていたエリザベスや使用人はマリアンヌを起こさず、静かに部屋の中に昼食を運び入れた。
だが、マリアンヌはそれを口することは無かった。




