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強盗達が全員縛り上げられると、住人達は歓声を上げた。店内では、店主がジークハルトにお礼を言っていたが、ジークハルトは店主にしきりに謝っていた。修繕費はこちらで全部出すという会話も聞こえた。
縛り上げられた強盗達は、憎々しげにジークハルト達を見ている。
「手を出す相手を間違えましたね。後で後悔するでしょう。」
ジークハルトに説教をしていた男が、手にしていた剣を強盗達に見せて言い放った。強盗達はその剣に刻まれている紋章を見て驚愕し、力無く項垂れてしまった。
ジークハルトはマリアンヌの姿を見つけると駆け寄り、強く抱きしめた。
「シルヴィー!」
「ジーク…。」
「僕が軽率だった。店主にも君にも怖い思いをさせた。」
自分の渡した金貨が原因でこういう事態になってしまったことに負い目を感じている様だ。ジークハルトの声は沈んでいる。
「でも、かっこよかったわ。」
「君も、中に入ろうとしただろう。」
「…それは。」
「あの時が人生で一番恐ろしかったな。」
抱きしめられた腕に力が込められる。少しジークハルトの手が震えていた。マリアンヌは泣きそうになりながら、ジークハルトの背中に腕を回した。
「ごめんなさい。」
「次からは、ああいう危険なことはしないでくれ。」
「はい。」
ジークハルトはそっとマリアンヌを抱きしめていた腕を解くと、次は神妙な面持ちで口を開いた。
「ところで、さっきの男とは知り合い?」
「ゲルタさんのお店の常連の人。たまにお話しするの。」
「…そうか。」
「ジーク?」
「なんでもない。そうだ、今日は家まで送るよ。この辺なんだろ?」
そういえば、前回は"家がこの辺だ"と言ってしまっていた。マリアンヌは、どうしたものかと一生懸命頭を回転させた。
「…実は前は親戚の家に泊まっていたの。」
「そうなの?」
「この前はそこに泊まったのだけど…、今日は親戚もいないから宿に泊まろうと思って…。」
とんでもない大嘘をついているが、致し方ない。宿に泊まるふりをして、ジークハルトがいなくなったらこっそり出ればいい。という考えに至った。
「その宿まで送っていくよ。」
「ありがとう。」
「あと、護衛をつける。今日のことがあると心配だ。」
ーなんだって…。
マリアンヌは断ったが、ジークハルトは聞く耳を持たなかった。
あの騎士のような男たちは誰なのか、護衛をつけられるような家の出身なのかと聞きたいことは山ほどあるが、今は、ジークハルト達を撒いて別邸へどう帰ろうか…そちらを考えることの方が大事だった。




