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マリアンヌがジークハルトに追いついた時、既にジークハルトは雑貨屋の中にいた。ドアやショーウィンドウが破壊された薄暗い雑貨屋の中には、震えてうずくまる店主とその前に立ちはだかるジークハルト、ナイフを手にした4、5人の男たちがいた。強盗に間違いない。
強盗たちは目から下をボロ布で覆い、顔を隠している。彼らはジークハルトよりも体格がよく、端から見ると圧倒的不利に見えた。そしてジークハルトは丸腰だった。
「ジーク!…離して!」
「危険だ!!」
雑貨屋の中に入ろうとするマリアンヌの腕を、近くで見守っていた住人が掴んで引き留める。何人もの住人が中の様子を遠巻きに伺っている。「平和な町だってのに…。」「物騒なことが起こるなんて…。」困惑している声があちこちから聞こえてきた。
「丸腰の坊ちゃんに何ができるってんだ。」
いやらしい笑いを含ませた強盗たちがジリジリと間合いを間合いを詰めていく。緊張感が外にも伝わってくる。マリアンヌは背筋にヒヤッとした汗をかいた。
ーどうしようどうしよう…。誰かジークハルトを助けて。
その時だった。誰かが優しくマリアンヌの頭の上に手を乗せた。
「任せとけ。」
ーこの声は…。
声の主は颯爽と店内へと入って行き、手にしていた鍬で強盗を薙ぎ倒していった。深くフードを被っていて顔は見えなかったが、マリアンヌにはすぐに分かった。
「ギード…!」
目頭が熱くなる。こんなにも頼もしい友人がいてくれて良かった。安心すると膝から力が抜け、マリアンヌはその場に座り込んだ。
「恩に切る!」
ジークハルトはギードに礼を言うと、1人の強盗が落としたナイフを拾って応戦した。ジークハルトもギードも手馴れているのが分かった。相当訓練されている動きだった。そして、2人は互いに背中を預け、強盗たちの攻撃から身を守っていた。息の合う2人を見て、彼等も仲良くできるかもしれない…とマリアンヌは思うのであった。
「クソ!!!このガキどもが!!」
大柄の強盗がギードに襲い掛かる。ギードは身をそらして避けたが、フードが外れ顔が露出した。その顔を見たジークハルトは目を見開いた。
攻撃を避けられた強盗は怒りに任せて、ナイフを2人に向かって投げつけようとした。あまりのことにマリアンヌは両手で目を覆う。グッ…と男の呻き声が聞こえると、マリアンヌはそっと手を離して店内の様子を見た。
そこには剣を持った何人もの男たちがいた。格好は軽装だったが、明らかに他の住人とは違う。騎士さながらの出立ちだった。彼らは床に転がっていた男たちを縛り上げ始めた。
「なんてことをしてるんですか!貴方は!」
その中の1人が、ナイフを投げようとしていた男をのしてからジークハルトに詰め寄っていた。
「すまない…、後で説明する。」
「今日は近くにいるなとおっしゃるから…!騒ぎを聞きつけたらこの状況って…もう笑えませんよ本当に!何があったらどうするんですか!」
激しい勢いで捲し立てられてジークハルトはたじろいていた。
店内からフードを深く被り直したギードが出てくる。ギードは手にしていた鍬を住人に渡した。おそらく、その住人から拝借してきたのだろう。マリアンヌはギードき声をかけようと近付いた。
「ギード…、その、ありがとう。」
「いや、いい。俺のことは、あの男に何も言わないって約束しろ。あと、お前もこういった場所では金貨を出すなよ。」
ギードはそう言い残すと、走っていなくなってしまった。




