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飯屋に入ると、カウンターにいるゲルタがニヤニヤしながらマリアンヌとジークハルトを迎え入れた。
「あれ、おまえさんたち、いつの間にそんな関係になったんだい?」
「ひゃっ!違うの。」
言わてみれば、2人は手を繋いだままだった。マリアンヌは急いで手を離した。
「ひゃって…どこから声が出たんだ。」
ジークハルトはくすくすと忍び笑いをしている。マリアンヌは、ぶすっとしてジークハルトを置いてカウンターに座った。ジークハルトもその後から隣に腰掛けた。
「怒った?」
「…別に。」
「怒ってるじゃないか。」
「いいえ。」
「シルヴィー、今日のおすすめのデザートは木苺のパイだってさ。」
「本当!?」
マリアンヌの態度を見てまた忍び笑いをするジークハルト。マリアンヌは完全にジークハルトのペースになっていることが少し悔しかった。いつか、ジークハルトを打ち負かしてやりたいと密かに思った。
ーカランカラン…
一杯目のワインを飲み終えると、誰かが入店してきた音が鳴った。入ってきた客は、たまに見かける常連客だ。だが、空いた扉からは微かにギード達の気配を感じられた。気のせいだろうか。
「どうかした?」
「ううん、なんでもない。」
「そう?あ、木苺のパイが来たよ。」
「美味しそう。」
マリアンヌの前に木苺のパイが置かれた。こんがりと焼き色のついたパイは食欲をそそる甘い匂いを漂わせている。ゲルタからフォークを受け取り、パイにつけようとしたその時だった。
「やべぇぞ、あそこの雑貨屋に強盗が入ったって!」
店の外から聞こえてきた大声にマリアンヌとジークハルトの手が止まる。雑貨屋ってまさか…あそこではありませんように…。マリアンヌらそう願ったが、次に発せられた男の声でその思いは打ち砕かれた。
「本当か?」
「なんでも大金を持ってきた客がいたとかで、その金を寄越せと言っているみたいだ。」
マリアンヌの手が震える。どうしようどうしようどうしよう…頭の中が混乱して何も考えられない。
「シルヴィーはここにいて。」
ジークハルトは席を立つと勢いよく外へ飛び出した。
「待って!」
「シルヴィー!!やめな!危険すぎる。」
ゲルタに止められる。さっき会ったばかりの店主さんに何かあったら…ジークハルトに何かあったら…そう思うと居ても立っても居られなくなった。マリアンヌは、注文した品と同金額の硬貨を机に置くと、
「ゲルタさん!ごめんなさい。ここで待っているだけなんて出来ない。」
と言い、雑貨屋へと急いだのだった。




