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ギルヘルムとヨゼフが軽口を叩き合っている頃、飯屋でギード達とマリアンヌは雑談で盛り上がっていた。ギードの酒を飲む手は止まらず、酔いが回っているのか珍しく、シルヴィアの主人であるマリアンヌについて尋ねた。
「マリアンヌ様とやらは外に出られない程病弱なのか?」
「…そう、かも。」
「かも?」
「ううん、そうなの。自室からも出られることは殆どないわ。」
「そうか。」
あまり話題に上がらないマリアンヌことを聞かれ、その本人であるマリアンヌは動揺を見せた。しかし、悟られてはならないと必死でその動揺を隠した。
「ここもルードリッツ領なのに、領主の話あんまり聞かねぇよな。」
そう言って、ギードはジルベール達を見る。
「ユリアンヌ様の噂は色々聞きますけどね。」
ジルベールは苦笑しながら、ユリアンヌの名前を出した。
「あぁ…、あれか。」
「ギード、不敬だぞ。」
「すまんすまん。」
フォルカーに窘められ、軽い謝罪を口にするギードも彼女に良い印象を持っていないようだ。
「ユリアンヌ様のこと知ってるの?」
「噂だけどな。社交パーティーでは自己顕示欲が強すぎるとかなんとか。」
「へぇ…。」
ユリアンヌのことは容易に想像できた。平民の方にも噂が回るほどだとは思っていなかったが…。
「そんなお嬢様がいる家で働いてるとか、お前も大変だな。」
「ユリアンヌ様とはあまり関わりがないから…。」
「なら良いけど。俺だったら即辞めてるね。」
「だから、ギード、不敬だって。」
酔いが回っているのかギードはよく喋る。
「ああいうのが、もしも嫁になったら…とか考えると本当に無理…。って、おい、返せ!」
酒を飲み続けようとするギードのグラスをジルベールが取り上げる。
「もう終わりです。ギードはあまり強くないんですから。」
「なんでだよー。」
「お終いです。」
「ちっ…。」
ジルベールにはギードも勝てないようで、大人しく水を飲んでいる。そろそろお開きにする時間帯だ。マリアンヌは立ち上がると、金を多めにテーブルに置いていく。
「俺たちが払うからいい。」
ギードは置かれた金をマリアンヌに返そうとする。
「だめです。これはマリアンヌ様から預かったものだもの。手紙配達のお礼も入ってるし…。」
マリアンヌはその手を押し返した。
「じゃあ、宿まで送ってくから待ってろ。」
ギード達には、毎度2軒先にはある宿に泊まり明朝に帰ると伝えている。
「宿は2軒先よ。大丈夫。」
マリアンヌはそう言って、ギード達の返事を待たずに店を後にした。




