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国王ヴィルヘルムと王妃エメルダには、無償の愛情を注いでいる2人の年子の王子がいる。兄のアルヘルムと弟のギルヘルムだ。
生まれた時から王位継承権は兄のアルヘルムにあり、アルヘルムは幼い頃から帝王学を学んでいた。知識は充分備わり、有無を言わせぬ統率力もあったが、彼は人に対する慈しみの心を持ち合わせてはいなかった。王族、貴族、平民の身分に拘り、下の者には決して歩み寄ろうとはしなかった。
一方、弟のギルヘルムは身分に拘らず分け隔てなく誰とでも関わりを持ち、皆から好かれる男であった。下級貴族の使用人に厳しく当たるアルヘルムの宥め役も行い、王宮内の人間関係の改善に努めることを怠らなかった。若いながらも外交にも優れ、各国を飛び回り、様々な国と交友関係を結んでいた。
ギルヘルムは、アルヘルムが受けた帝王学を全て身につけていた。ヴィルヘルムの意向により、兄を手助けする役割が果たせるよう一年遅れて学ぶことになったが、アルヘルムよりも遥かに早くその全てを吸収していった。剣の腕前も国一番で、ギルヘルムに敵う者は居なかった。
アルヘルムの耳に入ることは無かったが、誰もが将来はギルヘルムが国王になることを臨んだ。
父であるヴィルヘルムは、そのことに気付いていた。だが、アルヘルムは自身が将来の国王になることを望んでいるのに対し、ギルヘルムは国王の地位は全く興味を示さなかった。愛する息子達を信じようと、今はただ見守ることにしたのである。
ここビスタルク国は、生まれた時から結婚が決まっている許嫁というものはなかった。恋愛婚ができる訳でもなく、結婚適齢期になった時に都合の良い家柄の相手選ぶのである。
アルヘルムはこれから迎える誕生日で適齢期となる。連日、権力のある家から娘を紹介され、ここのところアルヘルムは苛々していた。王宮の使用人達は、アルヘルムの近くではいつも以上に緊張して過ごした。
「兄上、もう何名かに絞ったらどうです?」
「絞る何も、正妃にしたい女が一人もいない。」
アルヘルムは、ギルヘルム達が調べ上げた様々な家の情報が記された紙を見ては、気に入らない令嬢の記録紙を破いていた。
「先程のクリスタ侯爵令嬢は?」
「私くらいの高身長な女は無理だ。」
「リリアナ伯爵令嬢は…」
「鼻が低すぎる。」
自分が国王となった時は、王妃には政治に口を出させないと決めているアルヘルムは、賢さよりも見た目重視なのだ。
だが、アルヘルムもギルヘルムも、すらっとした身体に彫刻のように整った顔を持っており、2人に引けを取らない令嬢はなかなか見つけられなかった。




