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初投稿です。誤字脱字あるかと思います。読みにくいかもしれませんが精進して参りますのでよろしくお願い申し上げます。
薄暗い部屋の中で、唯一の友達は鏡の中の自分だった。
…なんて言ったら、精神を病んでしまっているのではと疑われるでしょうね。
でも仕方ない。本当のことなのだから。
マリアンヌは、誰もが羨むルードリッツ公爵家の長女としてこの世に生を授かった。肌は陶器のように透き通り、髪も目も輝くような美しさのブロンドで、生まれたばかりのマリアンヌを見ると「これは…類まれなる美しさだ…。」と皆が息を漏らしたほどだった。
マリアンヌの母はセラフィーヌと言い、隣国ジュール国の現王モーガンが愛する娘であった。身も心も女神のようで、ジュール国はもちろんのこと、嫁ぎ先のビスタルク国でも話題の人となった。しかし、彼女は病弱であり、マリアンヌを出産後、我が子を抱くことなく死んでしまった。
ルードリッツ公爵家当主マルクスは、ここビスタルク国では宰相を務めており、国王ヴィルヘルムの熱い信頼を得ていた。
ビスタルク国とジュール国は長年敵対していたが、当時のビスタルク国は、どこの国よりも広大な土地と軍事力を所有していたため国力の差は一目瞭然だった。ジュール国は、国王の娘セラフィーヌをビスタルク国に嫁がせることによって、国同士の均衡を保つことにしたのである。
政治的な駆け引きで決められた政略結婚ではあったが、マルクスはセラフィーヌをとても愛していた。多忙を極めてはいたが、セラフィーヌの側に長く居たいという思いが強かった。
セラフィーヌも、マルクスを愛しており、マルクスの栗色の柔らかい髪を撫でることが好きだった。2人は、ビスタルク一の、おしどり夫婦と呼ばれ、皆から望まれて生まれた子どもがマリアンヌであった。
しかし、セラフィーヌの死によって状況は一変する。
マルクスは塞ぎ込み、これまで以上に仕事を詰め込むようになった。髪の色も瞳の色も全てがセラフィーヌと同じマリアンヌを視界から遠ざけた。マリアンヌの世話の全てを使用人に任せ、本邸を留守にする日々が続いた。
三年後…。
また数日、マルクスは行方をくらました。
そして、酒場の娘セリスを連れて本邸へと帰ってきたのだった。
セリスの腕には、栗色の髪の赤子が抱かれていた。