"素顔"という仮面
顔を無くした少女は
いろんな仮面を被りながら
「本当の自分の顔」
という仮面を作っている
ある日
その仮面が自我を持ち
外せなくなってしまった
彼女は今でも
自分が作ったその
笑った仮面の下で
泣きながら
待っている
いつかこの仮面を外せる人が
現れると信じて
仮面の下に
本当の自分の顔
なんて無いのに
ついにその少女は
仮面を外せる
と言う少年と出会った
しかし
その少年はいつになっても
仮面を外そうとしなかった
彼は言った
その笑顔の仮面は
とても綺麗だし
他の人はもうその顔に
違和感を感じてないから
わざわざ外す必要は無いと
少女は嬉しかった
自分の作った仮面を
褒めてくれたから
けれどそれと同時に
彼は自分の仮面しか
見てくれないんだ
と寂しくなった
その日から彼女は
上にもう一つ仮面を被り
「本当の自分の顔」を
自分の本当の顔だと
言うようになった
顔を失くし
仮面をつけた少女は
1人の少年と会った
その少年は
万人受けするような
性格ではなかったが
彼女の気を惹いていた
そして少年も
彼女のとこが気になっていた
何回か話すうちに
お互いが好きになり
たとえ仮面の下に
本当の顔がなくても
彼女は少年にそれを
見せたくなった
案の定というべきか
その少年も彼女の
仮面は外せなかった
けれども彼女は
諦めたくなかった
それほどまでに
彼のことを
好きになってしまった
こんなのもういらない
そう思い
彼女は壁に顔を叩きつけた
すると仮面に罅が入った
本当の顔が見せたくて
彼の制止の声すら
届かないくらい一心不乱に
壁に顔を打ちつけ続けた
痛かった
けれど彼に本当の顔を
見せられないことに比べたら
痛みなど気にならなかった
気にしたら負けだと思った
仮面の破片が
すべて取れたとき
打ちつけた痛みと
仮面が取れた嬉しさで
涙を沢山流しながら
彼の方を振り向いた
そのとき彼女が笑っていたか
仮面の下に本当の顔
があったはわからないが
彼は彼女の顔を見て
涕を目に浮かべながら
言葉が零れてしまった
とても素敵な笑顔じゃないか